『源氏物語』は恋愛小説なのか? これだけは押さえておきたいあらすじ
全体は三部構成
とにかく長く、延々と続く小説で、登場人物の数は500に及ぶとも言われているのだが、この長大な内容も、大きくは3つのセクションに分けられると考えられてきた。かなりのダイジェストにはなってしまうが、三部それぞれの内容をここで概説しておこう。
【第一部:光源氏の青春と栄華/第一巻「桐壺」~第三十三巻「藤裏葉」】 桐壺帝の寵愛を受けた桐壺更衣は美しい皇子を生むが、皇子が3歳のときに病死。有力な後見人がいないことを慮った帝は、やがてこの皇子に源氏の姓を与えて臣籍に降させた。降下した少年は、たとえようもなく美しい容姿ゆえに、「光る君」「光源氏」などと称されるようになる。 光源氏は亡母によく似ていることから桐壺帝に入内した藤壺を思慕し、やがて密通に至るが、藤壺に生き写しの童女紫の上を見出すと、盗むようにして自邸へ迎え取り、彼女が成長すると妻にする。その一方で、空蟬や夕顔、六条御息所、朧月夜の君、末摘花など、さまざまな女性たちと恋愛を重ねてゆく。 一時は政敵の勢力におされて京を離れ、須磨・明石に逼塞するが、そこで豪族の娘明石の君と結ばれる。やがて帝の赦しを得て帰京。その後は昇進を重ねてゆく。そして豪邸六条院を造営し、紫の上や夕顔の遺児である玉鬘など、自分が関わりをもった女性たちを住まわせ、優雅な日々を送る。 39歳のときには明石の君との間にもうけた娘が東宮(皇太子)の妃となる。自らは准太上天皇となり、六条院に冷泉帝と上皇(朱雀院)が行幸するという至上の栄誉を手にする。
【第二部:光源氏の悲劇と晩年/第三十四巻「若菜上」~第四十一巻「幻」】 光源氏は40歳のとき、朱雀院から後見を託された院の娘女三の宮を正妻として迎えるが、紫の上はこれに傷つく。一方、かねて女三の宮に心を寄せていた青年柏木(光源氏のライバル、頭中将の長男)は強引に宮に近づき、宮を身籠らせてしまう。 光源氏はまもなくこの秘密を知るが、生まれた薫は表向きは源氏の子として育てられる。自責の念に苦しむ柏木はやがて病床に臥し、妻落葉の宮の後見を源氏の長男夕霧に頼んでこの世を去る。夕霧はいつしか落葉の宮に恋心を抱くようになるが、妻の雲居雁(頭中将の娘)がこれに激しく嫉妬する。 やがて光源氏最愛の女性紫の上が病死し、深い悲しみに沈んだ源氏は故人を追憶しながら出家の用意を整え、死を迎える。