東大100人進学の聖光学院合格した男児の父親が語る「やらなかったこと」
2023年度、東大に100人合格したとして注目された神奈川県の私立中高一貫男子校・聖光学院。自習室は高校3年生のみ、土日祝日や長期休みも利用できる。さらに高校3年生は、食堂の夕食を別注できる。学習時間は21時までで、お腹を満たして勉強に打ち込める。昼は食券を買って注文する普通の学食で、ソフトクリームもある。部活や環境が充実していて、受験期には手厚いサポートがあるといい、人気の高い学校だ。 【写真】中学受験「最上位層」が体験・大手受験塾「灘中受験ツアー」の一部始終 ジャーナリストのなかのかおりさんが中学受験の体験者を取材する連載の今回は、中学受験がゴールではなく、なりたい職業に就くための学校として目標を定め、息子さんの聖光学院合格のサポートをした父親の大学教員・Sさんにインタビューした。
サピックスのクラス落ちもプラスに
Sさんの長男は、幼稚園のころから公文とそろばんに通った。 「公文のメリットは、どんどん先に進めること。中学生までの過程を、小学3年生で終わらせました。小学校6年間の基本的な勉強は、3年生までに終わらせる。3年生は、四谷大塚で受験勉強の基本をやる。4年生からサピックスの厳しさを体験するのがいいかなって思ったんです」 実際に入ったサピックスでの成績は、アルファで一番上のクラスだったが、クラス落ちすることもあった。 「落ちても、プラスの経験でした。悔しさを味わったり、自分の足りないところを知って気が引き締まるし、努力すればまた上がれました。私と妻から息子にアドバイスをして、見直す機会にしました。サピックスはテストが多くて、宿題の量もすごい。子どもは、くじけちゃうと思うんです。 だから、つらい受験勉強をポジティブに考えて、成績が下がっても最小限の落ち込みにしてあげたいって思ったんですよ。何が大事かというと、将来の目標です。自分はこういう職業に就きたい。そのためには、こういう中学に行って、こういう勉強をする。息子には、そういう楽しい未来を描かせるようにしました」
なりたい職業のために頑張れる
中学受験をすることは、親が勧めたという。小学2年生のときから学園祭に行き、5校ぐらい見た。 「食堂に連れて行くと、聖光のソフトクリームはおいしいなとか、こういうご飯が毎日食べられる生活になったらいいなとか実感できました。 それに学園祭は、いろんな部活の先輩たちが親切に接してくれる。例えば、同じ物理学部の出し物を、こっちの方が面白いとか、本格的とか、学校によって比較できる。聖光は天文部の先輩たちの天体の説明が詳しくて、良かった。ここで過ごしたいと思った学校を、息子が第一志望に選びました」 Sさんは、なりたい職業について、長男が小さい頃から意識させるようにしてきた。 「幼稚園のとき、飛行機に乗ったらパイロットが手を振り返してくれたらしいんです。公文やそろばんは、将来パイロットになるためにやるっていうモチベーションになった。最初は、そういう憧れでいいと思うんです。 その後、息子はコロナ禍に、医師になりたいと言い出した。私は、将来何になりたい?という問いかけをいつもしていました。目的は勉強そのものでなくて、将来のキャリアを築くこと。適性を試そうと、理科の実験教室にも参加しました。大きなカエルや、豚の胎児を解剖して、気持ち悪くなる子もいる中、息子はグループの中で一番張り切って取り組みました。 それから人体の本を買ってあげたら喜んで、こういう仕事がしたいと。ならば、医学部の合格実績が高い学校はどこ?と話しました。いろんな中学校に行ったけれど、ソフトクリームもおいしかったし、聖光だねと合致しました」