高校生が廃棄物からセスキ合成に世界初挑戦【STEAM教育のきざし】
いま、科学技術を通じて社会課題の解決を目指す若者たちの取り組みが注目されている。その代表的な事例のひとつが、愛媛県立西条高等学校の科学部SSHセスキ合成班の活動だ。洗浄剤の原料となるセスキ炭酸ナトリウム(セスキ)を廃棄物から合成しようという、世界で初めての挑戦である。この取り組みは教科の枠を超えてさまざまな情報を活用、統合し、実社会での問題発見・解決を目指すSTEAM教育のヒントとなりそうだ。
アワードやコンテストで高評価
お堀に囲まれた江戸時代の陣屋の跡に建つ愛媛県立西条高等学校は、120年を超える歴史をもつ伝統校だ。そして、愛媛県東予地域初のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)でもある。
その校舎の一角にある実験室が、西条高校科学部の活動拠点だ。ここで、SSHセスキ合成班はおむつ灰の主成分である炭酸ナトリウムから洗浄剤に使うセスキの生成を目指してきた。彼らの活動は、自主的かつ高度な研究活動が評価され、科学技術イノベーション(STI)を用いて社会課題を解決する優れた取組を表彰する「STI for SDGs」アワードで2022年度最優秀次世代賞を獲得。また、同年の高校化学グランドコンテストの書類審査では上位2チームに入り、23年2月に台湾で開催された世界大会への出場も果たした。 ※スーパーサイエンスハイスクールは文部科学省により指定され、先進的な理数教育を実施するとともに、将来国際的に活躍し得る科学技術人材等の育成を図ることを目指している。
自分たちの街の課題は自分たちで解決
この研究は2021年春、西条市に紙おむつや生理用品等の製造工場を持つ花王が、地域貢献活動の一環の教育支援として研究テーマを提案したことでスタートした。「おむつ灰を農作物の肥料に使うとか、有効利用する方法を考えてほしいというお話で、私も生徒たちもびっくりしました」と科学部顧問の大屋智和さんは振り返る。
花王と京都大学は同年から包括共同研究を開始し、西条市内のこども園で「使用済み紙おむつの炭素化リサイクルシステム」に向けた実証実験を行っている。リサイクルにおいては炭素利用後にできる灰を活用することも重要であるため、地元・西条市の高校生にも活用法を検討してもらうことにしたのだ。