高校生が廃棄物からセスキ合成に世界初挑戦【STEAM教育のきざし】
このような関係性を構築できているのは、部員たちの積極的なコミュニケーションによるところが大きい。班内では頻繁にディスカッションを行い、問題点の検証や解決策について真剣に話し合っている。それによって各人の思考力が養われ、成果に結びついていると大屋さんは言う。
商業科との連携などで、さらなる進展を
彼らの活動は校内での実験やディスカッションばかりではない。近隣の小中学校で出前授業をしたり、コンテストやアワードに応募したりと、校外でも広く活躍している。
今年2月には台湾での国際大会に参加し、新本さんと横井良音(よこいりょうと)さんが英語でプレゼンテーションを行った。来年3月には2年生の部員2人がチュニジアで行われる大会に参加する予定だ。自分たちの研究を論文にまとめて発表することで、プレゼンテーションの力も養われるだろう。
さらに、台湾での経験から、新本さんは英語を学ぶ意欲もさらに向上したという。それまでは受験の科目だとしか思っていなかったが、実は海外の人々の交流に役立つ重要なツールなのだと認識したそうだ。
これまでの活動について「西条市の課題に対して産官学連携で、まさに理想的な形で取り組めていると思います」と語る大屋さんは「今後はセスキ製品の販売もやっていきたいですね」と商業科との連携を見据えて展望を述べる。
近年、論理的思考力や問題解決能力を身につけ実社会での活用に生かすSTEAM教育が文部科学省によって推進されているが、「STEAMを地でやっているのが本校の教育だと思います」と大屋さんは胸を張る。こうして養われた若い力は既に社会を動かし始めており、今後さらに大きな力となって数々のイノベーションを生み出すことだろう。
プロフィール
愛媛県立西条高等学校科学部 1896年、愛媛県尋常中学東予分校として開校。戦前の中学校と高等女学校が統合され、1950年に現在の名称となる。2018年よりスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定。科学部は地域に密着した研究に取り組んでおり、コンテスト、アワード等の受賞多数。
大屋智和 愛媛県立西条高等学校 教諭 2016年、京都大学大学院工学研究科修士課程修了。愛媛県立松山中央高等学校教諭を経て、19年より現職。