高校生が廃棄物からセスキ合成に世界初挑戦【STEAM教育のきざし】
こうしてチームを引っ張り大きな成果を残した曽我部さんだが、実は1年生の間に取り組んだ研究は失敗続きで、「失敗の原因をいろいろと知っていたので、そうならないように思考することを心がけました。それがスムーズに進んだ理由だと思います」と語る。失敗の経験も、彼らの糧となって成長に寄与しているのだ。
おむつ灰をろ過して炭酸ナトリウムに
この研究を受け継いだ後輩たちは、実際におむつ灰を利用してセスキの生成を目指したが、これも一筋縄ではいかなかった。
「まずおむつ灰をろ過して不純物を取り除かないといけないのですが、それがなかなかうまくいかなかったんです」と3年生の新本友季(にいもとゆうき)さんは語る。ろ過しても炭酸ナトリウムを抽出できないのであれば、先の段階には進めない。 ここで研究は3~4カ月ほど停滞したが、化学の授業で得た知見やSSH発表会での審査員のアドバイスを生かして試行錯誤を繰り返すうちに、活路が見いだされた。セライトという珪藻(けいそう)土をベースにしたろ過助剤を添加することで、不純物が多くてもろ過できるようになったのだ。
その後、炭酸ナトリウムの純度は51パーセント程度まで向上。一方、セスキの収率は不純物があるほうが高くなるという実験結果も出ていて、純度が高いほど良いとは限らないようだ。この謎を解き明かすべく、現在は2年生が中心になって研究を進めている。
ディスカッションで思考力を養う
現在の活動の主力である2年生たちは、おむつ灰以外の原料からもセスキを生成しようとしている。「炭酸ナトリウムが主成分というごみは少ないので、さまざまなごみに含まれている食塩からセスキを合成して、さらにごみを削減しようとしています」と植田紗世(うえださよ)さんは説明する。そこで西条市から廃棄物由来の食塩を提供してもらい、実験を進めているという。そして「先輩たちに教えていただいたように、後輩にいろいろなことを伝えていきたい」と語る。こうして後の世代にも研究は受け継がれていくのだ。