【高校野球】あと一歩で甲子園を逃した日大三 流れる涙は「本気」と「全力」を出し切った証
チームをまとめたキャプテン
【第106回全国高校野球選手権西東京大会】 7月28日 決勝 神宮球場 ▽早実10x-9日大三高 猛暑の中、息詰まる攻防が展開された。日大三高は3時間14分の激戦の末、早実との西東京大会決勝でサヨナラ負け。3年連続甲子園出場を逃した。試合後、応援席へのあいさつを終えると、一塁ベンチ前で悔しさのあまり、立ち上がることができなかった。20人の登録選手、ほとんどが涙を流した。「本気」と「全力」を出し切った証しである。 主将・土井貴仙(3年)は言った。 「あと一歩で負けたので、悔しい思いで涙が出てきました。ノーシードからという苦しい戦いでしたが、三木さん(三木有造監督)を男にできなったことが悔しいです」 昨秋は東京大会2回戦敗退。今春は東京大会3回戦敗退。なかなか実力を出し切れないチームだった。主将・土井は明かす。 「チーム全体のまとまりがありませんでしたが、キャプテンの自分が嫌われ役になってやってやろう、と。夏に向けて、チームが一つになりました。決勝では中1日でエース・谷亀(谷亀和希)が先発。頑張っていたので、もう一度、甲子園で投げさせようと、谷亀のためにも援護したかったですが、残念です」 日大三高は学校、グラウンド、寮が同じ敷地内にあり、指導者と野球部員は24時間体制で向き合う。家族のようなチームが伝統として根付く。日々、絆を深めて、勝負の夏を、最高のモチベーションで迎えたのだった。 昨年4月、小倉全由前監督(侍ジャパンU-18代表監督)からバトンをつないだ三木監督は主将・土井の貢献度を語る。 「熱い男で、力もあり、リーダーシップもある。重荷になったかもしれないですが、ここまでよくチームをまとめてくれた。よく決勝まで進出してきた。だからこそ、最後、勝たないと……。勝たせてやれなかったのは、監督の責任。選手たちは、難しい状況になっても、必死に食らいついてくれました。勝たせられなかったのは、監督がダメだからです」 敗軍の将、兵を語らず。勝てば、選手の努力を称え、負ければ、指揮官がすべての敗戦を背負う。小倉前監督時代から変わらないポリシー。「24時間指導」で大人が本気を見せるから、生徒たちも意気に感じて動くのだ。 「甲子園」という、最高の結果を手にすることはできなかった。あらためて、確認する。高校野球は、教育の一環。日大三高での3年間の取り組みは間違いでないことが証明された。土井主将の無念、そして積み上げた財産を、次の世代が受け継いでいくことになる。 文=岡本朋祐
週刊ベースボール