「紹介してくれたら150万円」老人ホームが入居してほしい高齢者とは 過剰な訪問看護で得た診療報酬が原資に…医療費が流出している?
「親が介護が必要になってきた。老人ホームへの入居を考えているけど、どこのホームがいいのか分からない」。そんな人の相談に乗って老人ホームを紹介する会社が、今や大都市部ではいくつもある。ホーム側にしてみると、空き室はなるべく埋めたい。その場合は紹介会社に多少高いお金を払ってでも、入居者を紹介してほしいという心理が働く。関係者に取材すると、中には老人ホームが紹介料150万円を払ってでも入居してほしい高齢者がいるのだという。業界平均の6倍の金額だ。その高齢者たちにはある共通点があった。(共同通信=市川亨) 【写真】4時間以上、支離滅裂な内容を繰り返し…「とにかく静かにしてほしい」 気がつくと右手が妻の喉をつかんでいた 警察官に「もう死んでいます」と告げ、その場で逮捕 老老介護の果ての殺人を、市民はどう裁いたのか
▽老人ホームの社長がため息 「いや、参りました。東京ではこんなことはない。大阪は異常だ」 複数の地域で有料老人ホームを運営する会社の社長、梅沢浩平さん(仮名)はため息をついた。 大阪府内のホームの入居者について、紹介会社から100万~150万円の料金を提案されたのだという。厚生労働省の2020年度調査では、紹介料の全国平均は1人約23万円だった。150万円となると、6倍強だ。 この紹介会社が同社に「他社の事例」として示した文書には「別表7、8に該当する入居者」との文言がある。これはどういう意味なのか。 ▽難病などの患者では高い診療報酬が得られる 「別表7、8」とは、訪問看護などで厚労省が定めた疾患や症状の一覧表を指す。末期がんやパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)といった難病などが列挙されている。 医療保険を使った訪問看護の頻度は原則週3回と定められているが、別表7、8の患者の場合は、毎日3回まで診療報酬を請求できる。看護師らの判断で毎回、複数人で訪問することも可能で、加算報酬が得られる。 難病などの人を対象にした「ホスピス型」などと呼ばれる老人ホームでは、多くの運営会社が入居者向けの訪問看護・介護ステーションを併設。大手を含め一部では、訪問看護で不正や過剰な診療報酬の請求が指摘されている。