ライブハウスは「濃密最前線」じゃなきゃ面白くない――感染判明で店名公表、借金2億円の再出発【#コロナとどう暮らす】
経営するライブハウスで新型コロナの感染者が判明――。「株式会社ロフトプロジェクト」の創業者・平野悠さん(75)は、葛藤の末に店名を公表し、会長職を辞した。休業後の赤字は毎月5000万円にも上った。「頭がぶっ飛びましたよ」という一方で、50人の雇用を1年間は死守すると誓った。新型コロナに襲われたライブハウスで何が起きていたのか。2億円を借金し、再出発する平野さんが取材に応じた。(取材・文:宗像明将/撮影:稲垣謙一/Yahoo!ニュース 特集編集部)
避けられなかった店名公表、そして会長辞任へ
4月1日の深夜、平野悠さんの電話が鳴った。「深夜の電話が良い知らせのわけがない」。そう予感しながら電話に出ると、株式会社ロフトプロジェクトの社長である加藤梅造さんが、東京都渋谷区のライブハウス「ロフトヘヴン」について話しはじめた。 「『まさか……?』と言ったら『感染者が出ました』と。愕然としましたね。その日は眠れなかった」 ロフトヘヴンでの感染者の発生は、3月20日。ロフトヘヴンは椅子席形式のライブハウスで、当日は本来のキャパシティーの半分の50席にして「三密」を避けていたが、それでも感染者が出た。 「『よりによってうちの店か!?』と思いました。2月に大阪のライブハウスでクラスターが発生した時は、店名が公表されて大バッシングになっていたし。ただ、保健所から知らされたのは出演者の感染だったので、この件を公表するかどうか迷いました。ただ、その日に店に来ていたというクドカン(宮藤官九郎)が感染したというニュースがあって、これは他のお客さんにも広がっている可能性があると思った。それで店名を公表して、僕はけじめをつけるために会長を辞任したんです」 3月20日の出演者のうち2人が感染していた。客席に来ていたという宮藤さんも感染を発表し、バーカウンターで働いていたスタッフもその後のPCR検査で陽性が判明した。さらに、地方から来場していた観客2人も感染し、その1人の同居家族の感染も報道された。新型コロナウイルス「COVID-19」の猛威は想像を超えるものだった。 平野さん自身も、激しい逆風にさらされた。4月11日放映の『報道特集』(TBS系)の取材に応じた結果を苦笑して語る。 「『撮影のためマスクをしないでください』と頼まれて話したら、『あの人はマスクもしないでしゃべってる』って視聴者に叩かれたんだよ」