北朝鮮の「核放棄」裏切りの歴史 坂東太郎のよく分かる時事用語
今回も「北の核」は温存される?
そこに「何を考えているのか分からない」ことにかけては「いい勝負」のトランプ氏が2017年1月、米大統領に就任。案の定、「ここまでできるのか」と感心するほどの罵詈雑言合戦を繰り広げ、「もはや米朝開戦も不回避か」と思いきや、一転して初の米朝首脳会談が開かれる運びとなるのだから、分からないものです。 大統領就任2年目で秋に中間選挙を控えているという点では、クリントン政権の枠組み合意のタイミングと似ています。5月に実施された豊渓里(プンゲリ)にある核実験場の坑道爆破も既視感が。煎じ詰めるところ、北朝鮮の体制保証と核放棄の交換なのでしょうが、この題意は枠組み合意でも6か国協議でも同じです。しかも、当時より核兵器の研究や運搬手段としてのミサイル技術が著しく向上していて、「無能力化」の査察方針でもめたとき以上に難しいでしょう。 結局は、世界屈指の“理解不能男”同士のケミストリーがあって、常識人では誰も思いつかなかった素晴らしい結果になるのを期待するしかないという世界。一歩間違えば、今度は戦争の危機にもなりかねないので、トランプ大統領の本気度も問われましょう。もっとも「ドナルドの本気」とは何かも、計りかねるのですけど。
--------------------------------- ■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など