ストリートスナップに熱狂が生まれている理由 次の時代を作るインフルエンサー像とは
ストリートスナップを取り巻く新たな熱狂
ピックユーに出品する“主役”は、まだ無名のファッション好きたち。インスタグラムでのDMでのハンティングや紹介のほか、専用フォームからの応募も受け付けており、いずれもマイクロインフルエンサーをメインとしている。知名度の高い人物を起用し、そのフォロワーにリーチできた方が認知は広まりやすいが、冨田氏が河合氏の服装やスタイルを憧れて真似たり、実際に私物を譲り受けていたという原体験にあるように、雲の上の存在ではなく、身近な距離感を大切にしているという。 しかし、大きな特徴がなければサービスの認知は上がりにくい。そこで活用したのが、ストリートスナップ動画を活用したプロモーション。出品者として参加しているインフルエンサーにその日の私服を聞く「今日なに着てますか?」というショート動画は、昨年9月に始動してから約半年間でTikTokやInstagramの総再生回数2300万回以上を達成し、キラーコンテンツ化。同様のコンテンツの中でも先駆け的存在となり、このスナップ動画を本格ローンチに先行して9月から投稿を開始したことを機にSNSのフォロワーは急増した。本格始動から約3ヶ月で多くの出品者が登録し、ユーザー数も日々拡大を続けている。 ストリートスナップといえば、「ストリート(STREET)」「フルーツ(FRUiTS)」をはじめとするメディアが台頭し、1990年代後半から2000年代にかけて全盛期を迎えた。ストリートスナップに声を掛けてもらうために多くのファッション好き達が“勝負服“を着て原宿の街に繰り出していた。 スナップ媒体に共通するのは「リアリティ」。フェイク情報が氾濫する現代において今の若者が求めているのは、リアルなファッション好きが集まる“箱”だ。「スナップ媒体にはおしゃれな人が集まっている」「この人たちのようになりたい」「憧れの存在に近づきたい」──マイクロインフルエンサー×スナップという掛け合わせは、そのリアリティを演出する要素の一つになっている。 「そのブランドが本当に好きなのかわからないインフルエンサーを招待してばかりのファッションショーには興味が持てません」と河合氏。ファッションの面白さとは何か、その面白さはどこにあるのか。いま若者からスナップが人気を集めているのは、「本質的なファッション」の面白さがストリートに存在しているから、ということだけではなく、服やブランド以上にセレブたちが露出する現在のファッションウィークに、業界人だけではなく服好きたちも内心辟易としていることの表れなのかもしれない。