ストリートスナップに熱狂が生まれている理由 次の時代を作るインフルエンサー像とは
マイクロインフルエンサーが持つ新たな影響力
ピックユーが例外ではなく、マイクロインフルエンサーは近年、存在感を高めている。資生堂やユナイテッドアローズなどの企業がショップ販売員や美容部員のインフルエンサー化を促進。アダストリアが自社ECサイトで展開しているコーディネート投稿コンテンツ「スタッフボード」では地方店の販売員が人気スタッフになり、来店イベントに多くのファンが駆けつけるなど、新たなムーブメントが生まれている。 ピックユーのスナップ動画「今日なに着てますか?」には、まだ知名度が低い人物とパリのファッションウィークでランウェイを歩く人気モデルが同列で登場するが、“おしゃれな人が登場する”という期待値がサービス自体にあることで、出演者の知名度を問わずフラットな視点で閲覧されるため、無名の一般人も注目されるチャンスがある。つまり、「無名でもインフルエンサーとして成長できる」という可能性を秘めているのだ。 「すでに影響力を持つインフルエンサーに依存するビジネスではダメ。出演者の持つ数字の上下に左右されない世界観を作り上げることで、インフルエンサーを起用したコンテンツは自走できる」と河合氏。金銭を渡して有名人を起用するのではなく、熱量の高い出品者と購入者が自然と集まり、無名の出演者がインフルエンサーとして成長する。ピックユーはその成長と共に、アイテムの売上も伸長するという好循環を作り上げている。
コミュニティから、カルチャーを生む
昨年12月にはプレローンチから1周年を記念した初のリアルイベントと題し、出品者だけではなくユーザーも招いたDJイベントを開催。会場には出品者であるインフルエンサーやYouTuber、モデルたちとサービスのユーザーたちがごった返し、実際に購入したアイテムを着てそのアイテムの出品者とコミュニケーションを取る購入者や、直接会わないと気が付かない細やかなスタイリングをお互いに褒め合う来場者たちの姿が見られ、会場のキャパシティを超えて警察が規制に入るほどの賑わいを見せた。冨田氏と河合氏は「誰もが“自分が考える一番オシャレな服”で集まる空間の熱量は凄まじかった」と振り返った。 ピックユーは今後、前述のDJイベントのように、サービスだけではなくコミュニティとしても機能させ、新たなカルチャーづくりを目指していく。その目指す先は海外進出。日本発の「カワイイ」が海外にまで浸透するカルチャーになったのも、ストリートに溢れる原宿系やロリータたちがきっかけだったように、新たな日本発のファッションアイコンをピックユーが発掘し、スナップコンテンツを通して「日本の服好きはイケてる」というイメージを世界規模で作り出すことができれば、世界でムーブメントを起こす新たなカルチャーを日本のストリートから再度発信できるだろうという考えだ。 お気に入りの服を着て、誰かに見てほしいという気概を持つ人は、誰しもがインフルエンサーになり得る。そういった熱量の高い服好きを紹介するスナップコンテンツの再燃が、日本のファッション業界を盛り上げる新たなエンジンの一つになるかもしれない。