スーパーの商品より6倍高い高級焼き芋が飛ぶように売れる…ウーバーでも食べられる"最高糖度78度"秘密公開
「焼き芋」がおいしい季節がやってきた。さつまいもの品種が多様化する中、“自然本来の甘さ”を極限まで引き出し、最高糖度78度の商品を製造・販売する宮崎県の会社が話題だ。年商はたちまち3億円超に達し、今後はNYなど海外での販路拡大予定だという。ライターの水野さちえさんがイベント「さつまいも博」も仕掛けた40歳の代表を取材した――。 【写真】SAZANKAグループの菅生健二さん ■焼き芋の内側が出てきた天然の“蜜”…甘さが異次元 ふつうの焼き芋は表面がカサカサだが、それは蜜でピカピカ。つまむと見かけによらず、ずっしり重い。とろりとしたたっぷりの蜜もろともがぶりと口に入れると、想像のはるか上をいく異次元の甘さにすべての人が驚いてしまう。 「自信作の“極蜜熟成やきいも”です。上にかかっているのはハチミツですか、と聞かれることが多いですが、これは焼き芋の内側が出てきた天然の“蜜”です。皮まで全て甘いですよ。砂糖、添加物、保存料は一切不使用です」 そう話すのは、宮崎市田野町でさつまいもの生産と加工を手がける、SAZANKAグループの菅生健二さん(40)。主力商品のひとつ「極蜜熟成やきいも」は1㎏で3990円。1本約300gとすると、1300円以上と決して安くはないが、飛ぶように売れるのだ。 菅生さんの焼き芋事業歴は約7年。当初は地方で小さい規模で細々と始めた零細ローカルビジネスだが、今や、地元宮崎や九州だけでなく、全国区に名乗りをあげ、世界進出するなど急成長中だ。有名なユーチューバーも関わったその躍進ぶりを報告する前に、菅生さんがなぜ、焼き芋を作るようになったかを紹介しよう。
■「ラーメン叔父さん」の成功を見て育つ 高校卒業まで宮崎で育った菅生さん。地元のラーメン店のフランチャイズを手がけて成功した叔父を見て、「自分も飲食業で成功したい」と夢を抱いた。大学を卒業後に上京し、IT企業勤務を経て2009年、恵比寿に焼き鳥店を開いた。 「東京で知り合った焼き鳥職人と、地元の同級生の3人で開業しました。私自身はアルバイトで接客の経験はあるものの、経営は独学でしたね。かたっぱしから本を読んで勉強しました」 宮崎の食材を用いた焼き鳥店は評判を呼び、代官山や二子玉川といったエリアで次々に系列店を増やしたが、早々に撤退を余儀なくされる苦い経験もした。 転機は2017年だった。前出・叔父が、「(宮崎市の)田野町にすごくおいしい焼き芋があるんだけど。食べてみて」と焼き芋を送ってきたのだ。 ■日本初 ウーバーイーツで焼き芋を売った男 それは田野町で生産された、「紅はるか」。その甘さとおいしさに驚嘆し、自分でも焼いてみたくなった。焼き鳥店の仕事の合間に、焼き時間と温度を測定してデータを集めながら焼き続けるうちに、「焼き芋は科学だ」と思うようになる。徐々に、甘みが強くおいしい焼き芋を焼けるようになった。 タイミングよく登場したのが、ウーバーイーツだった。2016年に日本でサービスを開始したウーバーの初期の配達エリアは渋谷と恵比寿。同じエリア内に店があったため、さっそくウーバーイーツで売り出すと、「菅生の焼き芋はおいしい」とたちまち飲食店の経営者仲間に評判が広がり、注文が舞い込むように。