スーパーの商品より6倍高い高級焼き芋が飛ぶように売れる…ウーバーでも食べられる"最高糖度78度"秘密公開
■限界突破はさつまいも作りから 焼き芋の販売は飛躍的に伸びた。だが、一方で新たな壁に直面していた。焼き芋の品質が安定しないのだ。 「宮崎で熟成させて東京に輸送したさつまいもを、うまく焼ける日と焼けない日がありました。焼く温度や時間といった条件を同じにしても、焼き上がりにばらつきが生じてしまうのです。いくら焼く技術を磨いても、さつまいもそのものの品質が安定しないと、商品としての焼き芋の品質を高めるのには限界がある。その限界を突破するために、2つの行動を起こす必要があると考えました」 それは、生産地でさつまいもを焼き、栽培する土壌をよりよくすることの2点だ。 ■最高のタイミングで焼くために 叔父は自身のラーメンチェーンをやめて、さつまいもビジネス一本にしぼり、地元で生産者グループを立ち上げていた。菅生さんは、生産者や叔父らと2018年、さつまいもの生産と販売をワンストップで手がける「SAZANKAグループ」を設立。さつまいもの糖度を、熟成段階でいかに高められるかを追求していった。 「おいしい焼き芋づくりの最重要ポイントは『いつ焼くか』、つまりタイミングにあることがわかってきました。さつまいもに含まれるβアミラーゼという酵素が、加熱によって糊化するさつまいものでんぷんを分解し、麦芽糖に変えていきます。この麦芽糖が、糖度に直結するわけです。保管庫でゆっくりと温度を上げながら、90日ほどかけてさつまいもを熟成させ、これ以上熟成させたら腐敗が進むというギリギリのタイミングを見きわめて、すぐに焼く体制を構築しました」 さらに、焼くのは独自レシピで2段階。焼くうちに蜜が皮からにじみ出るSAZANKAの焼き芋は、研究者の知見も取り入れながら試行錯誤を重ねた結果、2020年に最高糖度78度を記録した。スーパーで販売される焼き芋の糖度が40~50度とすると、別次元の甘さである。 ■土が強ければ芋も強い 栽培時の土壌づくりにはどんな工夫をしたのか。 「畑に、畜産で発生する畜ふんを利用した地元発祥の有機JAS認証堆肥“さざん華”をふんだんにまくと、味がよくなることが実証されました。さらに地元にしかない土着菌を活用した農法にチャレンジ中です。その土地が持つ力を借りることで、病気に強く、生命力の高いさつまいもが育つというわけです」 残留農薬がないため、SAZANKAの焼き芋は皮ごと安心して食べられる。さらに、全国的に発生が見られる「さつまいも基腐(もとぐされ)病」の発生も抑えられているという。