Xで知り合った「投資の先生」に従い、海外FXで月利10% 信じた女性を待っていたSNS型投資詐欺の手口とは
「貯蓄から投資へ」。テレビから聞こえてきた言葉に、兵庫県の30代会社員のアユミさん=仮名=は思わず反応した。物価高が続く2022年夏、日用品や食品はできるだけ安い価格のものを選ぶようになった。日本経済への不安が募る中で耳にした「投資」に背中を押された気がした。自分で何とか資産を増やすしかないと決意し、ツイッター(現X)で情報収集を始めた。そして、あるアカウントが目に留まった。(共同通信=後藤直明) 【経済】円の国際価値が過去最低 ドルやユーロなどと大差、主要通貨としての地位揺らぐ
※記者が音声でも解説しています。「共同通信Podcast」でお聴き下さい。 ▽収益5600万円のデイトレーダー 「Manaka」という名前のアカウントだった。アイコンには人気漫画「ドラゴンボール」のキャラクターであるブルマの画像が使われていた。プロフィル欄には「1980年代生まれの元保育士の女性デイトレーダーで収益5600万円達成」と記載があった。 女性の名前で投資情報を発信するアカウントは多くはなく、親しみやすさを感じた。「フォローする」。スマートフォンの画面をタップした。 Manakaは外国為替証拠金取引(FX)に関する助言を頻繁に投稿していた。FXとは、取引業者に預けた証拠金を担保に、日本円と米ドルなど2カ国の通貨の為替相場を予測して売買する取引のことだ。アユミさんも独学で売買していたが、うまくいかず損失が出ていた。だが投稿の助言通りにすると成功し、お金を増やすことができた。
質問を送ると丁寧な返信があり、やりとりを重ねたところ、FXのこつをまとめたPDFデータまでくれた。投稿の中には、顔こそ写らないが友人との旅行の写真もあり、さらに親近感を覚えた。一度も対面したことはないが「投資の先生」という存在になった。 半年ほどたった2022年末ごろ、Manakaは新たな投資を始めると投稿した。プロのトレーダーに取引を任せて損益が自分専用の口座に反映される「コピートレード」というもので、海外の証券会社が運営する「Assassin(アサシン) FX」を使うという内容だった。 アユミさんは怪しいと感じたが、半年間ずっと親身に指南してくれた信頼感が上回り、参加を決めた。連絡手段はツイッターからLINE(ライン)に変わった。 ▽チャット埋め尽くす「ありがとう」、生まれる仲間意識 招待されたラインのオープンチャットには既に数百人の参加者がおり、投資に使うためのインターネット口座を開設するよう指示を受けた。「詐欺かもしれない」。疑念が拭い切れていなかったことから、1万円だけを振り込んだ。実際に取引が始まると、トレーダーの予測が当たり、ホームページ上に表示された口座の金額がわずかに増えた。