栃木の108歳女性が「世界最高齢の理容師」に認定された日 裸眼で90年以上使い続けているハサミを操る
「そのために髪を伸ばしてきたんです」って。それで、急きょ、切らせていただくことになりました。 それほど緊張はしませんでした。いつもどおりにやるだけですからね。わたしの愛用のハサミをめずらしそうに見ていたので、「これは90年使ってます」と申し上げたら、とても驚いていました。 ■「パーフェクト! パーフェクト!」 ベンさんの髪はとても切りやすかったんですけど、髪の毛の生え方がね、上向きに生えている毛と下向きに生えている毛があって、こう、ぶつかるんです、後頭部の首の上あたりで。それを申しましたら「そうなんです!」って。
「毛がぶつかるところだけ黒く線ができたようになるので気にしていたんです」とおっしゃるので、線ができないように加減しながらカットしましたら、とても喜んでくれました。 「こんなふうに工夫して切ってもらったのは初めてです!」と感激してくれましてね、「パーフェクト! パーフェクト!」と何度も言ってくださいました。わたしもとてもうれしかったです。 世界最高齢の理容師認定は、ここ数年で一番思い出に残っている、わたしにとって大きな出来事でしたので、写真をお茶の間にも飾って、家族や親戚や友だちにも何度も話をしました(笑)。今では「おばちゃん、この前も聞いたよ」「よっぽどうれしかったんだねー」って、みんなから笑われているほどなんです。
それでね、ギネスブックの現在の記録が108歳で亡くなった人だから、「108歳になったらギネスブックにも載るかもしれない」って言われるとね、まだまだがんばろうって思います。 このことがきっかけで、次は109歳までハサミを持ちたいという、新しい目標ができました。 ■気がついたら大好きになっていた仕事 わたしが理容師になるなんて、夢にも思っていませんでしたよ。 それがひょんなことから、「床屋に見習いに行ってみないかい?」と友だちのお母さんに誘われて、父も同意して。「これからは、女も手に職をつけることが大事になるかもしれない。結婚しても旦那に先立たれたときに、身を助けてくれる職業かもしれないから、いいんじゃないか」。父はそう言ったんですよ。