習近平政権は「大学生の夜遊び」すらも恐れている…《高学歴ワーキングプア続出中》の中国で広がる「若者の怒りと絶望」
大卒の25%が見合った仕事に就けない
近年、中国では経済環境の悪化によって社会不安が高まっている。不動産バブル崩壊により経済成長は限界を迎え、特に若年層の雇用機会減少と経済格差拡大が顕著だ。 【写真】これはヤバすぎる…!中国で「100年に一度の大洪水」のようす 前回記事〈いまの中国には夢も希望もない…若者の貧困化を止められない「習近平政権の大失策」〉では、将来を不安視する中国の若者の状況などを解説した。 中国の社会経済の研究者の試算によると、23~25歳の大卒者のうち約25%が学歴に見合っていない仕事に就いているという。 また、中国の現役大学生の多くの初任給は減少傾向にあるようだ。生涯賃金は従来の世代を下回る可能性は高いとみる専門家もいる。「小紅書」と呼ばれる新興の中国SNS(主なユーザーは、1995年以降に生まれた人で7割が女性)では、“失業中”のハッシュタグが付いた投稿の閲覧数が21億回に上ったとの報道もあった。 ここへ来て、景気低迷で雇用、所得環境は悪化傾向が鮮明化している。 都市と農村の戸籍制度に基づく、社会保障など経済格差の拡大を自力で解決することも容易ではない。政府の締め付けによって、IT先端企業で面接を受けることすら難しい若者も増えたという。 将来に対する不安、不満は増大し、自暴自棄になって事件を起こす人が増えた可能性は軽視できないだろう。若年層を中心に、自力で生活を豊かにするのは難しいと感じる人は増加しているはずだ。
新たな需要の創出が不可欠
最近、中国政府は世論の不満の高まりに警戒感を強めているようだ。 9月下旬、国務院(政府)と中国共産党中央委員会は、金融・財政政策の出動に合わせ雇用対策も発表した。雇用ミスマッチの解消に職業訓練を強化した。若年層向けの支援として、中小企業、鉄鋼など基礎的な分野で、雇用創出や失業中の保障を拡充するようだ。農村地域での起業支援策の拡充方針も発表した。 その一方で、政府は社会統制を引き締めている。 2022年11月下旬、北京などで“ゼロコロナ政策”に反発した若者が“白紙運動”のデモを行った。それから2年経過した今年11月下旬、北京では公安当局が街中で警戒態勢を敷いた。一部の都市では大学生による“夜間サイクリング”人気が高まったが、当局は若者の集まりがデモに発展すると警戒し、規制に乗り出した。 本来、経済の成長には、人々の自由な意思決定によるリスクテイク、それによる新しい需要の創出が不可欠だ。 1978年以降、中国では改革開放を進めたIT、通信などの分野で民間企業の起業が増え、経済特区では海外企業から国有・国営企業への技術移転が起きた。豊富で安価な労働力により、工業化は加速し“世界の工場”としての地位も確立した。1990年代半ば以降、家計の豊かな貯蓄は不動産投資に回り中国経済は高成長を遂げた。