習近平政権は「大学生の夜遊び」すらも恐れている…《高学歴ワーキングプア続出中》の中国で広がる「若者の怒りと絶望」
米国の対中政策で社会不安は増大
ところが、2020年8月の不動産融資規制をきっかけに、不動産投資による経済運営は限界を迎えた。 現在、中国の景気回復に必要なのは、“イノベーション”による需要不足の克服だろう。新しい発想の実現には、人々の自由な意思決定が欠かせない。しかし、中国政府にとり、政治と統治の制度を守るため規制緩和は難しい。その結果として、社会と経済全体で閉塞感が高まっているようだ。 中国経済の課題として、不動産バブルに伴う不良債権をどう処理するか、効果的な施策が打ち出されていない。 今後、不動産業界、地方の中小銀行やシャドーバンク、そして政府系企業である地方融資平台のデフォルトと破たんのリスクは上昇するだろう。大手国有銀行などの利ザヤは縮小し、経済全体で資金の融通は難しくなることも懸念される。 トランプ米次期大統領の対中強硬姿勢は鮮明だ。12月4日、トランプ氏は貿易・製造業担当の上級顧問にピーター・ナバロ氏を起用。商務長官には中国に対する高い関税の実現を重視するハワード・ラトニック氏を指名した。 1期目のトランプ政権、現バイデン政権以上に、2期目のトランプ政権の対中引き締め策は強硬になる可能性が高い。
国民の政策不信はますます高まる
不良債権処理の遅れが長引くと、中国経済の長期停滞懸念は高まる。 デフレ経済も深刻化し、先行きの雇用環境悪化懸念は高まるだろう。米国の対中引き締め策によって中国の輸出が減少したり、AIチップなどの国産化が遅れたりすると、中国経済の下振れ懸念はさらに高まらざるを得ない。 これらが現実になると、経済成長の低下から家計の節約心理は高まることが予想される。地方政府の財政破綻リスクも上昇し、若年層から高齢者まで生活水準を維持できないとの不安が高まる恐れもある。 その際、政府は集会などの取り締まりや、SNS上での政策批判の摘発を徹底するだろう。結果的に、人々の政策不信は増大することが懸念される。 現在の中国政府の政策運営を見ると、社会心理が安定化に向かうという楽観はできない。そうした色々なマイナス要素を映して、人民元に売りが出やすくなっているとみられる。 ―――― 【さらに読む】〈「中国の激安製品」お断りの国が続々と…切り札なき中国経済に聞こえ始めた「崩壊の足音」〉もあわせてお読みください。
真壁 昭夫(多摩大学特別招聘教授)