スズキが世界最小0.8Lディーゼルを開発、インド市場へ「セレリオ」に搭載し投入【今日は何の日?6月3日】
●ディーゼルは小型化(1L以下)が難しいエンジン
世界的に見ても1.0L以下の乗用車用ディーゼルエンジンはない。1983年にはダイハツが「シャレード」に搭載した、当時世界最小の1.0L 3気筒ディーゼルエンジンを搭載して注目された。ボア76mm/ストローク73mmの渦流式ディーゼルで最高出力38ps/最大トルク6.3kgmを発生した。 これを、スズキの0.8Lディーゼルの排気量が下回ったのだが、一般的にはボア80mm以下の小さなディーゼルエンジンを成立されるのは難しいとされている。ディーゼルエンジンは、高圧の軽油噴霧を直接シリンダー内に噴射するので、ボアが小さいとシリンダー壁面に軽油が直接付着しやすくなり、噴射された燃料が有効に利用されない、排ガス中に未燃のHCやCOが増えるためである。 スズキの0.8Lディーゼルのボア/ストロークは77mm/85.1 mmで、一般的な3気筒にするとボア径はさらに小さくなるので、2気筒にしている。2気筒は振動が大きくなるので、インド市場では許容されても日本のような先進国市場では商品化するのは難しく、基本的にはインド専用となっているのだ。 さらに、最新のディーゼル車には排ガス低減のために高価な噴射システムや排ガス低減システムが必要なので、小型化するほどそれらのコストアップ分が相対的に大きくなってしまい、これも小型ディーゼルの商品化を困難にしている理由である。したがって、排気量660ccの軽自動車ディーゼルは実現が難しく、実際に存在した例はない。 なお過去に遡れば、ヤンマーが1958年に発売した軽トラック「ポニー」に360cc V型2気筒ディーゼルエンジンを搭載した例があるが、排ガス規制がない時代なので例外とした。 ・・・・・・・ インドのディーゼル人気は長くは続かず、その後2019年からディーゼル車の排ガス規制が強化され、スズキもディーゼル車のインド撤退を段階的に始めた。ちなみに、インド政府は2030年までに4輪車の30%、商用車の70%をEV化する目標を掲げており、日本同様、今後ディーゼルが復活する可能性は極めて低いと言える。 毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。
竹村 純