パルコ川瀬賢二社長 「一番売れるものばかり選んでしまうと金太郎飴になっていく」
2040年のパルコの姿
―2024年はどんな一年になりそうですか? 経済環境全体が悪化していく過程にあると感じているので、厳しくなるのではと危惧しています。ですが、それでも推し活動などの自分の心が豊かになることへの消費は伸びているので、我々自身はそのニーズに応える努力さえすれば、必ずしも業績が落ちることはないと思っています。 ―短期間で企画を入れ替えるプロモーションスペースを導入する商業施設が増えています。パルコでも催事が好調とのことですが、そういったスペースを増やしていく考えはありますか? テナントさんの成功が、我々の成功に結びつく原点。出店いただいてるテナントさんと一緒に売り場を盛り上げていきたいですね。 ―これまでのパルコにはないイノベーションは何か計画されていますか? 渋谷パルコでは昨年10月にVCMによる展覧会「Vintage Collectables Museum」を開催し、翌月にコメ兵がオープンしました。サステナビリティの文脈もあり、古着やヴィンテージは今年もっと強くなるんだろうと思っています。 もう1つは、昨年6月に社内に作ったゲーム部門にもう少し力を注いでいきます。一昨年11月にeスポーツの会社 ゼノス(XENOZ)にJ. フロント リテイリングとして出資をしたのですが、その責任者を僕が務めていたんです。今後はeスポーツに限らず、例えば音楽や映画と連動させるなど、ファッションの一部としてeスポーツやゲームを掛け合わせていきたいですね。 社員の働き方の面では、ワークライフバランスに配慮したシフトを今年1月から試験的に導入しています。もちろんテナントさんの営業に支障がないことを大前提とした上で、弊社社員の皆さんのワークライフバランスを進めていきたいと思っています。 ―若手社員に活躍の場を提供する一方で、40代以降の社員の待遇も気になっています。 現場は20~30代のスタッフが多いので彼らの活躍はすごく目立ちますが、それは40~50代の世代がいるからこそ。若手だけが活躍している会社ではないです。特にこれからはゲーム事業など、新しいコンテンツにも挑戦していきたい。そうなると、やはり若い力だけではなく、経験を積んできた方々の力ももちろん必要になってきます。ただ、お店の事業とは違う事業に携わるとすれば、40~50代の方も新しいスキルを身につけていただかなければなりません。 ―インタビュー冒頭で「2040年」というワードが出てきましたが、2040年のパルコの姿とは? 2040年になれば日本の社会自体がもっとインターナショナルになっていると思います。いまはインバウンドの話題がすごく華やかですが、この頃には東京や大阪だけではないところにも当たり前に海外の方々がいる状況になっているんじゃないかと。逆を言えば、旧来の日本人が住んでいるだけの日本国のままでは経済は衰退してしまうという危機感の裏返しです。だからこそ、パルコが展開している場所では、インターナショナルな方々にノンバーバルな価値を提供できる商業施設であり、体験施設になっていなければいけないと考えています。 ―インターナショナル化は避けられない。 むしろパルコ側から海外の方に利用してもらえるよう、“そばに行く”ということもあるんじゃないでしょうか。イベントから始めるかもしれませんし、常設で店舗を持つのかもしれません。それは現時点ではわかりませんが、越境ECとイベントなどのリアルと組み合わせて365日近くに感じていただけるような施策は進めていきたいと思ってます。 (聞き手:伊藤真帆、福崎明子)