パルコ川瀬賢二社長 「一番売れるものばかり選んでしまうと金太郎飴になっていく」
業績の戻り 若手の活躍も背景に
―実績への手応えはいかがでしょうか。 パルコ全体の取扱高としては、昨年3月から今年1月までの時点で20%増で推移しています。ただ、ばらつきはあります。それぞれの街がもつ性格でしょうか、コロナ前に比べて活性化している街があります。例えば渋谷や心斎橋、それから街の再開発のタイミングも合わせて考えると札幌も戻ってきていますね。逆に、仙台や名古屋、広島といった地方の大都市は社会環境が変わったこともありますが、コロナ前の実績に追いついていないところもあります。 ■パルコ 2024年2月期第3四半期累計期間の実績(2023年3月~11月) ※()内は前年同期比 総額売上高:2151億6200万円(17.4%増) 営業収益:425億600万円(7.4%増) 営業利益:86億4100万円(22.1%増) 四半期利益:50億2900万円(28.5%増) ―好調な店舗にある共通項は? アート、エンターテインメントとファッションの融合といった部分は3店舗ともに共通していると言えますね。 ―やはりアートとエンタメが強いコンテンツになっているんですね。 インバウンドのお客様が増えているので、その効果も大きくなっている気がしています。実際に渋谷パルコは売上の31%ほどがインバウンドによるものですし、来館者の半分が外国人観光客です。 ―先日、オープン前の渋谷パルコの前に待機列ができているのを見かけましたが、その多くが海外の方だったので驚きました。 心斎橋パルコも、6階のフロアに「ジブリがいっぱい どんぐり共和国」や「ゴジラ・ストア」「カプコンストア(CAPCOM STORE)」といったエンタメ関連のお店が並んでいるんですが、行くと別の国にいるんじゃないかと思うくらい、海外のお客様に多く来ていただいています。 ―足元の商況はいかがでしょうか。 好調です。特に渋谷、仙台、札幌パルコは、数字を一度見直してしまうくらい勢いがあります(笑)。 ―(笑)。インバウンド効果が大きいと思うのですが、どういった国の方が多いですか? アジア人がやはり多いですね。渋谷パルコに限っては欧米のお客様も多くいらっしゃいますが、札幌パルコだと中国やタイ、福岡パルコだと韓国のお客様が多かったりと、店舗によっても客層が少し異なります。 ―購買傾向にも違いはありますか? 渋谷パルコはラグジュアリーやカルチャーの店舗に加えて、ジャパニーズファッションがやはり支持されています。札幌パルコでは「オニツカタイガー(Onitsuka Tiger)」や「バオ バオ イッセイ ミヤケ(BAO BAO ISSEY MIYAKE)」「ブラック・コム デ ギャルソン(BLACK COMME des GARCONS)が人気ですね。ジャパンクリエイトのファッションは期待値が高いです。 ―ビューティへの手応えは? フレグランス関連のブランドがやはり好調ですね。パルコではビューティはそこまで特徴的に取り揃えていないのですが、それでもフレグランスのお店の勢いのすごさは感じています。特に渋谷パルコは香りの売り場を点在させていることもあって、空間の魅力にもなっていると思います。池袋パルコにもお店が入り始めているので、これから少しずつビューティの店舗は広げていきたいですね。 ―人気キャラクターの催事も話題を集めていますね。いち早く目をつけて企画されている印象があります。 “みんなが知っているコンテンツ”だと遅いんですよね。たとえば、夏に池袋店でシルバニアファミリーのイベントが開催されたんですが、これは若手社員の発案で実現しました。僕はその時までシルバニアファミリーが推し活の対象になっているということを知らなかったのですが、イベントに来場されたお客様の熱量がすごくて、驚きましたね。 ―ヒットするかわからない状態で、実際に企画を採用するかどうかを判断するのは難しい部分があるのでは。 当社は、面白いと思えばやっちゃうんだと思います。昨年、俳優の山下幸輝さんのプロデュースによる「キオク(KIOC')」というブランドを立ち上げたのですが、これも本部の女性社員の発案で。部長や役員レベルでは山下さんのことはあまり知らなかったのですが、実際に山下さんのブランドはSNSを通じた拡散で広まって大変好評でした。