パルコ川瀬賢二社長 「一番売れるものばかり選んでしまうと金太郎飴になっていく」
―企画は若手に任せる勢いが大事。 入社2年目で大きなイベントを担当するというのは、かなり当たり前になりました。「若手に任せる」と言えば聞こえはいいですが、本人たちは始める時はわからないことの方が多いわけですから、すごいプレッシャーを感じるんでしょうけど、それこそこの一年を振り返ってみると、それで成長したなと。みんな、次はこんなことをやりたいんだと目を輝かせています。 ―たしかに、パルコの皆さんは楽しそうに仕事している印象があります。札幌パルコのとある方はDJが趣味で、好きが高じてイベントもやっていましたよね。 そう、企画を立てちゃうんですよ(笑)。その社員は入社4年目の若手で、街中のDJに声をかけて札幌パルコの屋上でDJイベントを開催して、3日間で約1500人を集めていましたね。 札幌に限らずどの店舗もそうですが、みんな行動力がありますし、その街のカルチャーの最先端の人たちとすぐ友達になってしまう。広島パルコの2年目の社員は「BOOK PARK CLUB」と題し、街中の本屋さん集めてイベントをやったのですが、大変好評で福岡パルコでも実施しました。 イベントや企画は「パルコさんとならぜひ」とお声がけいただくことも多く、僕らもすぐに真に受けて行動に移してしまう。それがいいところなんですよ。特に2~5年目の人たちが考えることって面白いし、街の人たちも大勢集まって、すごい笑顔になってくれる。ただ、異動が決まると後任の社員もやりたいようにやってしまうので、持続性という点では若干問題がありますが(笑)。 ―(笑)。若手社員が成長できる機会があるのは貴重だと思います。 コロナ禍の3年間は人を集めてイベントを開催してはいけないという制限がありましたから、そのフラストレーションは彼らにとってすごく大きかったと思うんです。よく準備してきたなと感心しますよ。制限があった中でもネットワークを作り続けてきた。彼らに感謝ですね。 ―「興味関心」だけではなく、「パルコらしさ」の表現も企画に落とし込む必要があると思いますが、川瀬社長が考える「パルコらしさ」とはなんでしょう。 (パルコ元会長の)増田通二さんの言葉で「本人も周囲も面白がること」という経営理念があります。それがパルコらしさですかね。上司に言われたからやるのではなく、自分が面白いと思うコンテンツを、熱情のある人を巻き込んでやっていく。その結果、圧倒的多数ではないけれど、熱量の高いお客様が列を作ってまで館に足を運んでくださる、ということを我々が一番やりたいと思っていることだし、喜んでいただけていることなのかなと思います。 ―企画が却下されたり、形にできても失敗するなどの挫折経験ができると、現代の若者はすぐに諦めてしまいがちな印象もありますが。 挫折を経験したり、そのことが強く心に引っかかって人生に思い悩んだりする方々は若手に限らず、いろんな階層でいらっしゃいますね。我々もそこにちゃんと寄り添っていきたいとは思っています。ただ、僕らは仕事で失敗しても「ナイスファイト!」と声をかけるくらいにポジティブな雰囲気なんですよ。ついこの間も、新規で始めたけど撤退が決まった事業があって。その時も「ナイストライだったね」と肯定的でしたから。