「1ドル130円」の時代に突入か?…今週開催のFOMC「米利下げ」で生じる“リスク”【国際金融アナリストが考察】
2週間で約7円下落…「下がり過ぎ」懸念強まる
ただ、9月の2週間で147円台から140円割れ寸前まで約7円も米ドル/円が下落するなか、徐々に短期的な「下がり過ぎ」懸念も出てきたようです。米ドル/円の90日MA(移動平均線)かい離率はマイナス10%に近づくと「下がり過ぎ」が懸念されますが、13日にはマイナス8%以上に拡大しました(図表3参照)。 ヘッジファンドの取引を反映するCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、10日現在で買い越し(米ドル売り越し)が5.5万枚に拡大しました。円買い越しの過去最高は、2016年4月に記録した7.1万枚でしたが、低金利の円買いは、買い越しが5万枚以上に拡大すると、「行き過ぎ」の懸念が強まります(図表4参照)。 このように、9月に入って米ドル安・円高方向への動きが広がるなか、さすがに米ドル/円の短期的な「下がり過ぎ」や、円の「買われ過ぎ」といった「行き過ぎ」の懸念も出てきたようです。
今週の注目点…FOMCは「ドット・チャート」も更新
今週は18日のFOMC、20日の日銀金融政策決定会合など注目イベントが多く予定されています。ただ、やはり最大の注目はFOMCでしょう。この局面で最初の利下げが決定されるのはほぼ確実と見られますが、利下げ幅についてはまだ見方が分かれています。 また、今回のFOMCでは、メンバーの経済見通し「ドット・チャート」が6月以来の更新となります。6月時点では、政策金利のFFレートの予想中心値が、2024年末5.1%となっていました。つまり、現在5.25~5.5%のFFレート誘導目標を、2024年末に5~5.25%へ下げる=0.25%の利下げを1回実施するという見方だったわけです。 これに対して、現在の金利市場では、年末までに4.25%~4.5%へ一気に1%の利下げが実施されるとの見方が強まっています。このような見方の妥当性が試されることになるでしょう。 そのうえで、2025年末のFFレートの予想中心値が、6月時点の4.1%からどこまでの下方修正が実施されるかも注目されるところです。米ドル/円は7月頃から、金融政策を反映する日米2年債利回り差との相関関係が復活しています(図表5参照)。 このため、2025年にかけての米利下げ見通しは、米ドル/円の中期見通しを考えるうえで、1つのヒントになる可能性があります。 また、20日の日銀金融政策決定会合では、今回の政策変更はないと見られています。ただ、先週も日銀審議委員の発言を手がかりに、何度か円高に振れる場面があったように、日銀関連の材料に相場が過敏に反応する状況は変わらず続いています。 このため、今後の追加利上げ見通しなどに注目しながら、米ドル/円の値動きを荒いものにする可能性もあります。 すでに見てきたように、米ドル/円は短期的な「下がり過ぎ」、そして円も「買われ過ぎ」の懸念が出てきました。このため、米ドル/円の下落が続いた場合は、そういった「行き過ぎ」の修正をこなしながら、緩やかなものになるのではないでしょうか。 リスクは、FOMCを受けて米金利が上昇に転じた場合、米ドル/円「下がり過ぎ」、円「買われ過ぎ」の反動に注意する必要が出てくるでしょう。そうなると、9月に入ってから続いてきた米ドル高・円安への戻りの鈍い流れが変わるかが注目されます。 以上を踏まえ、今週の米ドル/円は138.5~143円で予想します。 吉田 恒 マネックス証券 チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長 ※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。
吉田 恒
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