「どうか、お父さんを連れて行かないで下さい」 フィリピン人男性への“退去強制処分”の取り消しと在留許可を求める訴訟が始まる
「子」に在留特別許可が与えられても、「父親」には与えられない
今回の訴訟で原告が国に請求する内容は、主に以下の3点。 1.東京入管による「在留特別許可不許可に対する異議の申し出には理由がない」とする裁決の取り消し 2.東京入管による、男性に対する退去強制発布処分の取り消し 3.法務大臣による、男性への在留特別許可 今回のケースに限らず、「外国人の子に在留特別許可が与えられたが、親には与えられない」という事例は多々ある。 今年9月、小泉龍司法務大臣(当時)は、日本で生まれ育った在留資格のない外国人の子らのうち全体の8割超える212人に在留特別許可を与えたことを明らかにした。だが、「入管を変える! 弁護士ネットワーク」共同代表の指宿(いぶすき)昭一弁護士によると、これらの子の親らのうち3割には在留特別許可が与えられていない。 「とくに父親は、在留特別許可が与えられない場合が多い。本訴訟では、この問題を問うことになる」(指宿弁護士)
「偽造パスポートで入国したことを反省しています」
提訴後に開かれた会見で、男性は「偽造パスポートを使って入国したことを反省しています」と語る。 「私の家族は、ここ(日本)にいます。父として、子の成長を見守る責任がある。家族と一緒にいさせてください」(男性) 男性の妻は「子どもを育てていくためには、夫が必要です」と訴えた。 また、男性の息子は、父親について書いた作文を読み上げた。 「お父さんの好きなところは、優しいところです。優しいお父さんが一番大好き。 ぼくは、もういろんなことが分かっています。どうか、お父さんを連れて行かないで下さい。 これからも家族三人、日本でなかよく楽しくすごしたいです」(息子の作文から) 原告訴訟代理人の駒井知会(ちえ)弁護士は、男性は37年間の生活を通じて日本の地域社会に溶け込み、ボランティア活動も行っていると指摘する。今回の訴訟にあたっても、男性が暮らす地域の住民や息子が通っている学校の関係者などから、多数の支援や嘆願書が集まったという。 また、看護師である男性の妻には、就労可能な「特定活動」の在留資格が出された。男性の息子に出された在留特別許可の資格は「留学」。「日本で生まれ育ったお子さんが『留学』というのはおかしい」と、駒井弁護士は疑問を呈した。