上白石萌歌、24歳の決意。「形を選ばず自分が面白いと思ったことは全部やっていきたい」
俳優の上白石萌歌さんが3年ぶりとなる舞台、シェイクスピアの『リア王』でリアの三女・コーディリアを演じている。昨年春には大学を卒業し、仕事に専念してきたこの1年は彼女にとってどんな年だったのか? 久しぶりの舞台に懸ける思いとは? PEOPLE NOW
女優はもちろん、歌手や写真を通じたクリエイティブな表現など、多方面にわたって精力的に活動する上白石萌歌さん。3月8日からはシェイクスピアの四大悲劇のひとつ『リア王』でリアの三女、コーディリア役を演じています。昨年春には大学を卒業し、仕事に専念してきたこの1年。日々の生活や仕事に対する意識はどのように変わったのでしょう? 3年ぶりの舞台に賭ける思いとともにお話を伺いました。
舞台は役者とお客さんでエネルギーを渡し合っている
── 今回は久しぶりの舞台のお仕事ですが、上白石さんの中では、テレビや映画の仕事とは何か違いがあるのでしょうか。 上白石萌歌さん(以下、上白石) 実は舞台は自分の原点みたいなところがあります。私はもともと鹿児島でミュージカルを習っていたんですけど、年に一回発表の場でみんなで板(舞台)の上に立って演じる、その感動が自分の原点なんです。 テレビや映画には、自分の知らない人にも電波を通じて伝わっていく良さがありますけど、やっぱり人に伝えることを実感しやすいのは、舞台なんです。私たちが板の上に立ってエネルギーを放出しているように、お客さんもエネルギーを放出していて、そのぶつかり合いが凄く好きで。 そのエネルギーのようなものをお客さんからもらったと実感するたびに、鳥肌が立つというか、このうえない喜びを感じるんです。稽古はしんどいと思う時もありますし、自分と向き合うと恥ずかしかったり恐ろしかったりする時間ではあるんですが、それでもやっぱりちゃんとエネルギーを渡し合っている空間が私は好きです。
── 『リア王』はシェイクスピアの四大悲劇と言われる作品ですが、セリフも難解で、物語も複雑で。上白石さんは『リア王』をどんな物語だと捉えていますか? 上白石 私は大学では芸術科を専攻していて、その中で演劇学も学んでいました。シェイクスピアは演劇史に多大な影響を与えていますので、授業の中でも絶対に通る道です。『リア王』は在学中に、今回脚本の翻訳で入ってくださっている松岡和子さんの小説をたまたま読んでいて。まさか自分がコーディリアを演じられるとは思っていなかったので凄くうれしかったんです。 シェイクスピアの作品は生まれてから400年以上が経っていますけど、それでも尚、こうしていろんな座組で演じられているのは、物語の中に常にその時代にとって大事なテーマや問いがたくさんあるからかもしれません。 ── というと? 上白石 例えば『リア王』は、今の日本で重大なテーマになっている「忖度」の話でもあるなと思います。冒頭にリアが3姉妹に「どれだけ自分を愛しているか言ってみろ」と言うシーンがあって、上の2人の姉妹はすごく流暢に愛を語るけれど、三女の私は口下手で上手に言えなくて、「何も(Nothing)」と言ってしまう。その場に合わせての忖度ができなかったんですね。 私も口下手なので、思ってもいないことを口にできるタチではないんですが、それでも、いざコーディリアと同じ状況になったらどうだろう、きっと周りに合わせてしまうかもしれない、とは思います。 ── 上白石さんはコーディリアをどんな女性だと思いますか。 上白石 つるっとした丸い、真珠みたいな女の子(笑)。誰よりも実直だし、誠実で真っ白なイメージがあります。彼女は幼くて正直すぎるけれど、そこが強さであり誠実さなんだろうなと。勇気のいることをすんなりできてしまう、とても素敵な女の子だと思うので、私もそのように嘘なくいられたらいいなと思っています。 一方でその真っ白な正義感がリアを狂わせてしまう。リアが狂うということは、世界が狂ってしまうということなんです。純白なものが周りを狂わせていってしまうこともあるんだなと考えながら、今台本を読んでいるところです。