「RMK」や「スリー」の立役者、石橋寧が化粧品業界に提言 Vol.4「コスメブランドにクリエイターは不要?」
――:トレンドは時代のムードだから、それが投影されてこそワクワクするものが生まれる。アーティストは撮影やショーの現場を踏んでいるから、そういう意味でも強いですよね。
石橋:10年ほど前にピーター・フィリップスが「シャネル(CHANEL)」から「ディオール(DIOR)」に移りましたよね。その時僕は、数年後に「ディオール」の時代がやってくるんだろうなあと思った。お会いしたこともないけれど(笑)。一方「RMK」も「アディクション(ADDICTION)」も昔に比べてクリエイターの存在感が薄いですよね、露出が少ないし。「スック(SUQQU)」も田中宥久子さん以降は表に出していない。時代の流れもあるけれど、結局は経営陣がその人の持っている能力をどう評価するかということですね。
――:日本でアーティストを立てない傾向にあるのは、評価できる経営陣がそもそも少ない?
石橋:何千万円も契約金を払うんだったらやめちまえ、という発想になる。わがまま言うし(笑)。ブランドが大きくなるとクリエイターが自分のブランドだと勘違いしてくることもある。それはそれでいいところもあるんだけれど、経営陣にしてみればわがままでうっとうしく感じるうえ、契約金も跳ね上がるから、以前は10年あたりを節目に変えることが多かったですね。やはり経営陣がクリエイティブディレクターをよく理解し、うまくコミュニケーションを取り続けることが大切になってきます。
――:そういう点では石橋さんはうまくやっていたということですね。
石橋:普通は同じクリエイターを二度も起用することはないからね。世間はどう思われたか分からないけれど、僕が「アンプリチュード(AMPLITUDE)」を立ち上げる時、高品質のかっこいいブランドを日本のブランドとして作りたかったわけですよ。当時ディオールやシャネルが急成長していて、そこで闘えるブランドを作ろうと思った。じゃあそれを誰にやらせよう、誰に関わってもらおうかと考えた時の答えがRUMIKOさんだった。かっこよくて高品質、そして日本のブランドだからどこかに日本を感じるものがなければいけないよ、と。そうして日本の藍色としての“ブラックネイビー”とジパングの“ゴールド”を使った「アンプリチュード」が生まれたわけです。