高知ユナイテッドSCは「Jなし県」を悲願の舞台に導けるか? 「サッカー不毛の地」高知県に起きた大きな変化
ミスター高知が語る「このチームで再びJのピッチへ」
「ここ3試合勝ててないですが、試合の入り方は悪くなかったので、いい時間帯で点が取れれば違った結果になっていたと思います。(選手に)多少の気負いはあったかもしれないですが、勝てている時と今とでは、何かが違っているとは感じません。勝ち続けていた時も、どちらに転ぶかわからないゲーム内容で、粘り強く勝っていますから」 チーム最年長の35歳で、アイゴッソ時代からプレーしている唯一のベテラン、横竹翔は「ミスター高知」と呼ばれている。日曜日の枚方戦では出番がなかったものの、現在のチーム状況についての指摘は的確で、説得力が感じられる。 横竹は広島出身で、サンフレッチェ広島のジュニアからジュニアユース、ユースを経てトップに昇格した生え抜きであった。日本代表のアンダー代表にもたびたび招聘されていたが、Jリーガーとして広島でプレーしたのは5シーズンのみ。2013年から2シーズン、ガイナーレ鳥取でプレーし、2015年に高知にやってきた。 「当時は、まさか10年も高知で暮らしているとは思わなかったです」と苦笑する横竹。地元の女性と結婚し、今は7歳を頭に3人の子どもにも恵まれた。プレーヤーとしては、長年にわたり名実ともにチームの精神的支柱として活躍してきたが、今年はキャプテンを小林大智に、そして10番を佐々木敦河に譲って自らは22番を選択した。 「22番は僕がプロになった広島時代に付けていた番号です。10番は高知の未来を担う選手に譲って、僕はこの番号でもう一度Jリーグを目指したい。そして、高知ユナイテッドの一員として、再びJのピッチに立つことができれば最高ですよね」 春野での取材から2週間が経過し、その後の2試合を1勝1敗とした高知。これを追走する栃木Cは、10試合負け無しで4ポイント差に迫っている。 高知と栃木Cは、共に2025年のJ3ライセンスが無事に交付され、どちらも1試合平均2000人と入場料収入1000万円以上という条件もクリアに目処がついている。そんな両者は、10月6日に春野で激突する。 果たして、ストレートで昇格するのは高知か、それとも栃木Cか。J3昇格を懸けたJFLの熾烈な戦いは、いよいよクライマックスを迎える。 <了/文中敬称略>
文=宇都宮徹壱