高知ユナイテッドSCは「Jなし県」を悲願の舞台に導けるか? 「サッカー不毛の地」高知県に起きた大きな変化
なぜ高知県は「サッカー不毛の地」だったのか?
高知は、巨大なJリーグ空白県である。総面積では47都道府県中18位だが、上位17位までは、いずれもJクラブが存在している。現在、Jクラブがない県は、高知、島根、三重、和歌山、福井、滋賀の6県。このうち、最も面積が大きい高知県は「日本最大のJリーグ空白県」ということになる。 一方で高知県は、鳥取と島根の両県に次いで人口が少なく、その数およそ65万人。人口密度が低い印象を受けるが、県民の半数が県庁所在地の高知市で暮らしている。理由はいくつか考えられるが、そのうちの一つが「平地が少ない」こと。昨年まで、高知のGMや監督を歴任してきた西村明宏は、以前のインタビューでこのように語っている。 「芝生のグランドで練習できるのは、週に2回くらいですかね。3回は難しい。そもそも芝といっても、野球場の外野芝を含めてですから(苦笑)。高知県は平地が少ないこともあって、サッカーができる環境が限られているのが現状です」 サッカーができる環境は限られている、もう一つの理由は「野球王国である」こと。明徳義塾や高知商業など、全国区の高校野球の強豪校を擁し、幾多のプロ野球選手を輩出してきた高知は、野球が盛んな四国の中でもとりわけ「野球王国」である。 もちろん、まったくの「サッカー不毛の地」というわけではない。山口智、吉村圭司、森田真吾など、高知県が輩出したJリーガーもいるにはいる。けれども、彼らはいずれもプロになるために、遅くとも高校時代には県外にプレーの場を求めている。Jリーガーや日本代表を目指す、高知のサッカー少年たちにとり、地元に残るという選択肢は基本的にあり得なかった。 そんな高知でも、サッカーを楽しむための社会人チームはいくつか存在していた。その一つが「南国高知FC」であり、2001年から05年までは四国リーグ5連覇を達成。2001年の地域決勝では、JFL昇格まであと一歩の3位まで上り詰めている。 2014年、Jリーグを目指すクラブとなるべく「アイゴッソ高知」となり、セレッソ大阪や京都サンガF.C.の監督経験がある西村を指揮官に招聘。同時期に元日本代表監督、岡田武史がオーナーとなったFC今治とは、四国リーグで熱い戦いを繰り広げるようになる。 そして2016年には、高知UトラスターFCと合併して「高知ユナイテッドSC」となると、今治が卒業した四国リーグで絶対王者として君臨。2019年の地域CLでは、いわきFCに次ぐ2位でJFL昇格を果たし、高知に初めて全国リーグを戦うサッカークラブが誕生した。