高知ユナイテッドSCは「Jなし県」を悲願の舞台に導けるか? 「サッカー不毛の地」高知県に起きた大きな変化
登録メンバー24人で開幕7連勝できた理由
JFL4年目、吉本監督体制2年目となる昨シーズンの高知は、初めてJFLで1桁順位(7位)を達成。また、この年の天皇杯では、J1勢のガンバ大阪と横浜FCに勝利してラウンド16に進出している。春野で8月2日に開催された、ベスト8を懸けた川崎フロンターレ戦には敗れたものの、スコアは0-1。この試合には、当時のクラブ史上最多となる7243人を記録した。 かくして、さらなる躍進が期待された今季の高知。ところが、今年のJFLのガイドブックを見て、思わず目を剥いた。高知の選手紹介のページがスカスカだったのだ。数えてみると、登録メンバーは22人しかいない(その後、開幕時に2人が加入して24人)。 なぜ、これほど絞り込んだ編成となったのか? 監督の吉本は語る。 「開幕時、24人しかいなかったのは、新社長から『今年はこの人数で』と言われたからです。予算が限られていただろうから、現場としてはそれでいくしかない。メンバーにケガ人が出たら、紅白戦はコーチとか僕が出る感じでしたね。この夏、レンタルを含めて新たに3人を獲得して、今は27人体制です」 「新社長」とは、選手寮の寮母として知られていた、山本志穂美である。本業は外車の販売業で、クラブの役員にも名を連ねていたが、クラブ経営についてはまったくの未経験。それまでの経営陣、そして10年にわたって現場を取り仕切ってきた西村もクラブを去っていた。「今年は高知、やばいんじゃないか?」というのが、開幕前の私の見立てだったのである。 ところが蓋を開けると、高知はスタートダッシュに成功する。春野にヴィアティン三重を迎えての開幕戦は3-0で勝利。以後、破竹の7連勝で勝ち点を一気に21に伸ばした。7連勝の中には「門番」Honda FCに2-1で勝利した試合もある。 「まず、今年はメンバーをほとんど変えなかったので、戦術的な方向性をブレずにできたのが大きかったと思います。昨シーズンは1試合で1点が精いっぱいだったのですが、今年は複数ゴールを決めることができて失点も減りました。僕が目指すサッカーは、13人から14人いるように見える守備。連続して互いにサポートしながら、状況に応じて変化していくサッカーができたのが大きかったと思います」 序盤戦の好調について、指揮官はこう解説する。新社長は開幕前から「今年こそJ3昇格」と目標を掲げていたが、現場はそれほどの確信はなかったと思われる。経営体制が大きく変わり、強化も制限される中で「失うものは何もない!」という開き直り。それに、若さと勢いが掛け合わさったことが、開幕7連勝の起爆剤になったのであろう。