【独自取材】死の危険・人身売買組織の搾取…それでも国境超えを目指す人々 トランプ新政権の「不法移民の大量強制送還」前に“駆け込み移民”も(後編)
「大量の死亡者が出る準備を進めている」
また、移民希望者を支援するNPO団体のアメリカ・グレワール代表は、“駆け込み移民”の増加によって「大量の死者が出ることに対する準備を始めた」と語る。 グレワール氏のNPOは、危険な国境を超える旅の途中で亡くなった人の身元を特定し、遺体や遺骨、遺灰を故郷に帰している。バイデン政権が6月に厳しい入国管理に方針を転換して以降も、身元不明の遺体は定期的に発見されているという。さらに今後、“駆け込み移民”が急増すれば、それだけ命を落とす人も増えると見ているのだ。 「遺品の整理は3人で行う。1人はカメラを持っている。1人はメモ帳を持つ。もう1人はバックパックを開けて、食料を取り出し、着替えを取り出す。すべて写真に撮る。指紋も含めてデータベースに登録される」 トランプ政権発足前に大量の移民希望者が殺到するとの情報については、「メキシコで何が起きているのか、きちんとした統計を持っていない。バスで何人来ているのか、トラックで何人来ているのか。何人が密入国しているのか。基本的にブラックホールだ」と嘆いていた。グレワール氏は最後にこうつぶやいた。 「私たちは最悪の事態に備えている。トランプが約束を果たそうとしていることに備えている」
新政権発足前の入国「ベストだと考えるだろう」
カトリック系慈善団体で事務局長を務めているシスター・ノーマ氏は、2020年にタイム誌で「最も影響力のある100人」の一人に選ばれた人物だ。現在の状況と今後の行方について考えを聞いた。 「メキシコ側では、より多くの人々が集まり、入国に興味を持ち始めている。しかし、彼らの大半はまだ入国していない。彼らはどのタイミングで入国するのがベストなのかを探っている」 ノーマ氏によれば、メキシコ側では移民希望者の増加によって、すでに現地の教会関係者などが食事や水を提供する費用を捻出できなくなっているという。 「新政権が発足すれば、多くの人々が渡航を試みることを躊躇することになると思う。ほとんどの人は2025年の1月前に来るのがベストだと考えるだろう」 多くの移民希望者達が家族連れのため、子どもや赤ちゃんのためのミルクや薬の準備も進めているという。衣類や衛生用品も必須だ。さらに冬の時期に川を越えて越境する場合は、「水中の極端な気温の低下ために体調を崩したり、怪我をしたりする人もいる」とも指摘する。 トランプ新政権の発足を間近に控える中、アメリカへの移民を巡っては様々な意見が飛び出し、各所で具体的な動きも出ている。大規模な強制送還は実現するのか。軍の動員も行われるのか。治安改善や違法薬物の取り締まりに期待の声も挙がる一方で、経済への影響に懸念も挙がる。トランプ新大統領の決断に、多くのアメリカ国民が注目している。 (FNNワシントン支局 中西孝介)
中西孝介
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