「インバウンド増えてるのに航空便を増やせない」深刻な〝空の裏方〟の不足 「グラハン」の働く環境整備を
1月中旬の関西空港。まもなく到着する飛行機を10人ほどのスタッフが駐機スポットで待っていた。この日の平均気温は7℃。ただ、滑走路には日差しがさんさんと注いでいる。 「使命感で現場が奮い立った」羽田の飛行機炎上、ヒーローはJALだけじゃない JR、ANA、スカイマーク…ライバルが交通インフラを支えていた
飛行機が滑るように到着すると、次々と作業が始まる。乗客の荷物や貨物の積み降ろし、翼からの燃料給油、操縦席とのやりとり…。 航空機の発着に合わせて出発までの限られた時間に行われる地上支援作業を「グランドハンドリング」(グラハン)と呼び、従業員が安全な就航に向け日々汗を流す。だが新型コロナウイルス禍で激減した航空需要や、右肩下がりの国内の生産年齢人口などを背景に、担い手の減少が課題となっている。(共同通信=田中楓) ▽コロナで人員減 グラハンは主に、搭乗手続きをはじめ機内への誘導など利用者に対応する旅客ハンドリングと、航空機周辺の業務に当たるランプハンドリングに分かれる。 国土交通省によると、航空業界という高いブランド力で就職希望者が多い一方、深夜や早朝を前提とした勤務体系や、現場に若手が多く相対的に給与が低いことなどを理由に、結婚や出産といったライフステージが変わるタイミングで離職する人が一定程度、存在するという。
加えてコロナ禍には航空需要が激減し、新規採用も停止した。2019年3月には国内の全ての空港における旅客ハンドリングは約1万4100人、ランプハンドリングが約1万2200人だったが、そのうち前者は約2600人、後者は約1200人も減少した(2023年4月現在)。需要の回復に合わせて採用活動は活発になっているが、指導に当たる中間層の人手が足りずに負担が増しているという。 ▽業界を巡る現状 この問題が表面化したのが、昨年11月のスイスポートジャパンの事例だ。成田や羽田、関空など国内6空港に拠点を持つグラハン大手の一角だが、管理職を除く社員の約6割が新人で一部の中堅に業務が集中し、長時間労働が横行していると労働組合が主張。「是正されなければ時間外労働を行わない」と通告する事態になった。 減便への懸念が高まったが、会社側が同業他社への支援要請などで業務量を減らすと表明し、沈静化した。 2023年8月に業界の持続的発展を目的として設立した団体「空港グランドハンドリング協会」は加盟する他の企業では同様の過重労働は確認されなかったとしている。