「インバウンド増えてるのに航空便を増やせない」深刻な〝空の裏方〟の不足 「グラハン」の働く環境整備を
しかし、小山田亜希子会長(ANAエアポートサービス社長)はこう指摘している。「処遇改善や労働環境の整備に注力し、長く働き続けられるような業界にしないと(今回のような)問題は解決しない」 ▽離職回避に向けて 航空需要が乱高下し、飛行機を飛ばすための安定的な人材確保が喫緊の課題となっているグラハン業界。だが手をこまねいているばかりではなく、さまざまな模索が始まっている。 「同期や先輩が辞めてしまい不安だったが、需要はいつか復活すると希望を持って頑張ってきた」。そう語るのは、ANA関西空港の徳岡紗由美さん(28)だ。コロナ禍前の2018年の入社組になる。 日差しに目を細めながら飛行機の前輪のそばに立ち、手元のコントローラーで航空機を自走できる位置まで押し出す「プッシュバック」の準備を始めた。ランプハンドリングの花形業務だ。 従来はトーイングカーと呼ばれるけん引車に乗り込み、ハンドルを握って操作してきた。運転には資格が必要で、入社5~6年の社員が約1カ月半かけて技術を身につけてきた。
全日本空輸では、若手でも花形業務に携わることでモチベーションを高めつつ訓練期間の短縮にもつなげようと、2020年から関西空港にリモコン式の電動航空機けん引車を導入した。 勤続3年をメドに、資格を取得すれば2日ほどの訓練で携われるという。徳岡さんは入社2年目からプッシュバックを担当する。「資格も短期で取れて、ベテランがやっていた業務が身近になった。とてもうれしい」と充実した表情で答えた。 ▽高い目標と課題 政府は、2023年に2506万6100人だった訪日客数を、30年には6千万人とする目標を掲げている。全日空広報部の担当者は、現在の航空需要をこう分析している。「国内線ではコロナ禍前を超える高水準が続き、国際線も円安の影響があるものの緩やかに回復している」 一方で国内の生産年齢人口は減少の一途をたどり、厚生労働省が2月に公表した地域別推計人口によると、全国の15~64歳は2050年時点で5540万2千人となり、20年比で26・2%減となる。今後については「人手だけに頼った業務設計の見直しや業界全体で業務の効率化を図る必要がある」と語る。