「プーチンは妥協できない」 ロシアとウクライナ エスカレートするミサイル撃ち合いの行きつく先は
■「脅し」か「本気」か “プーチンの真意”を測りかねる欧州
プーチン大統領が「核の脅威」を振りかざす意図は、欧州各国でもとらえ方が一致していない。 ウクライナへの西側の支援を止めるためで、実際に使用する気などないと見ているのがフランスだ。 バロ外相は23日、プーチン大統領の言動はあくまで「脅し」だとの見方を示した。ウクライナ支援に「越えてはならない一線はない」と述べ、フランスが供与した長距離巡航ミサイル「スカルプ」の使用を容認する考えを示した。また、フランス軍兵士の派遣が議論されていると有力紙が報道する。 一方で、11月15日、2年半ぶりに1時間にわたりプーチン氏と電話で話したドイツのショルツ首相は、プーチン大統領が「本気」である可能性を排除できないでいる。 ショルツ首相はその後、電話会談について「プーチンの戦争観にはほぼ変化はなかった」と振り返っている。ドイツ製の長距離巡航ミサイル「トーラス」は供給しない方針だ。
■“トランプ復帰”で事態の打開はあるのか
プーチン大統領の言動は「脅し」なのか「本気」なのか? 冒頭の歴史学者が、世界が破滅に向かうかどうか見極める区切りとして「年末まで」といったのは、トランプ氏のアメリカ大統領就任を見据えてのことだ。 欧米やトランプ陣営とも意思疎通を続けているクレムリンに近い関係者は、プーチン大統領はトランプ次期大統領の就任に期待をしているわけではないという。 「トランプは、長期間にわたる複雑な交渉は苦手だ。ロシアとウクライナの間に立って要求を調整し、妥協点を探りだし、合意案を練り上げるタイプではない。彼は自分が作った合意案を提示してプーチンにこう迫るだろう。『イエスかノーか。この場で判断しろ』と」 迫られたプーチン大統領はどう反応するのか? トランプ次期大統領の停戦案にプーチン大統領は合意するのだろうか? 「無理だろう。じっくりと駆け引きをするプーチンの交渉スタイルとはことなる。また、どれほど詳細に詰めたとしても、プーチンは一切譲ることはできないから」 プーチン大統領が一切の妥協を受け入れられない理由をクレムリン関係者はこう説明する。 「ロシアの憲法に明記してしまったドネツク、ルガンスク(ルハンシク)、ヘルソン、ザポロジエ(ザポリージャ)。このすべてをロシアの支配下に置かない限りこの戦いを終えることはできない。4州を憲法に書き込んでさえいなければ、交渉の幅は広がったはずだ。しかし手遅れだ。プーチンは自分が書き換えた憲法を否定することはできない」 さらに、前線で戦う軍部の意向もプーチン大統領を追い詰めているという。 「莫大な損失を被っているロシア軍は日々先鋭化している。軍部は常に『あらゆる妥協は敗北だ』と言っている。プーチンは一切譲歩できない」