モバイルSuicaの呪縛? 日本で「スマートウォッチ」タッチ決済が広がらない理由 インバウンド爆増時代に考える
EVERINGの人気急上昇、品薄状態の理由
海外ではクレジットカードと連携できるスマートウォッチが普及しており、この事実が公共交通におけるタッチ決済導入の重要性を物語っている。特にインバウンド需要の拡大を見据える場合、現在の交通系ICカード(Type F)一強の状況は変える必要がある。 日本国内でも、タッチ決済の利便性を広めるための取り組みが求められる。現在、関西圏では『EVERING』という決済デバイスのPR活動が活発に行われており、これは関西私鉄4社(近畿日本鉄道、阪急電鉄、大阪メトロ、阪神電気鉄道)のタッチ決済導入に合わせた販促戦略である。この活動は成功を収めており、EVERINGは現在品薄状態となっている。 EVERINGはVisaブランドのプリペイド式非接触型決済デバイスであり、その売れ行きには、日本ではスマートフォン以外でクレジットカードのタッチ決済ができるデバイスがほとんど普及していなかった背景があると考えられる。2024年後半から、日本人はタッチ決済の新たな可能性に気づき始めたといえるだろう。
スマートウォッチのセキュリティ懸念
タッチ決済乗車の導入と新しいデバイスの普及は、交通系ICカードの支配的な地位に変革をもたらす重要なステップとなる。しかし、これにはいくつかの懸念事項もともなっている。 まず、スマートウォッチはスマートフォンよりも紛失しやすいという特性がある。万が一、スマートウォッチを紛失した場合、どのように対処すべきか、また不正利用を防ぐために必要な対策は何かといった点が重要な課題となる。デバイスの販売者は、このようなリスクを十分に周知し、対策を講じる必要があるだろう。 加えて、クレジットカードのウェアラブル化は、ナンバーレス化を促進し、セキュリティ向上を期待させるが、EVERINGやスマートウォッチのような常に身に着けるデバイスには独自のリスクも存在する。スマートフォンのようにバッグにしまっておくことができるわけではなく、常に露出しているため、盗難や不正使用のリスクが高まる可能性がある。 現時点では、これらの問題に対する検証や実証が十分に行われていないことも事実であり、今後の課題として注視すべきだ。