「会社名に使えない文字」とは?定款作成でまっさきに決定する「発起人」と「会社名」の注意点【司法書士が解説】
会社設立の最初の一歩は、定款(ていかん)を作成することです。その定款には会社運営の基本ルールが記載されますが、その中でも「発起人(出資者)」と「会社名(商号)」は会社の基盤を築くものであり、一番に決定すべき項目になるでしょう。加陽麻里布氏(司法書士法人永田町事務所 代表)が、「発起人」と「商号」を深く掘り下げるとともに、それぞれの決定時に押さえるべきポイントを具体的に解説します。
発起人(出資者)とは?
発起人は、会社を設立するために必要な資本金を出資し、設立手続きを推進する重要な存在です。発起人は単なる形式的な存在ではなく、会社設立時の責任者であり、設立後もその役割が影響を及ぼす場合があります。 〈発起人の役割〉 ・資本金の出資者 発起人は設立時の資本金を出資します。この資金が会社のスタートアップ資金として機能します。 ・定款の作成者 発起人は定款を作成し、その内容に法的な責任を持ちます。株式会社の定款には発起人全員の記名押印が必要です。 ・設立手続の推進者 発起人は資本金の払込確認など、会社設立に必要なすべての手続きを進めます。 〈発起人になるための要件〉 発起人には次の要件があります。 ・個人または法人 発起人は個人(自然人)だけでなく、法人もなることが可能です。 ・法律上の能力が必要 未成年者や成年後見人は単独で発起人になることはできませんが、法定代理人を通じて発起人となることが可能です。 〈発起人の人数と出資割合〉 発起人は法律上1人でも設立可能です。ただし、発起人が複数いる場合は次の点に注意する必要があります。 ・原則出資比率に応じて、設立後の株主権利(議決権や利益配分)が決まります。 ・発起人間で責任分担や意思決定のルールを明確にしておくことで、あとあとのトラブルを防ぐことができます。
会社名(商号)の決定
会社名(商号)は、会社の「顔」ともいえるものです。商号は取引先や顧客との最初の接点となり、社会的な認知やブランドイメージを形成する基盤となります。 〈商号決定の法律上のルール〉 商号を決定する際には、次の法律上のルールを守る必要があります。 1.株式会社の表記 株式会社の場合、商号に必ず「株式会社」を含めなければなりません。「株式会社」という文言の位置は、商号の前後どちらでも構いません(例:「株式会社〇〇」または「〇〇株式会社」)。〇〇の前に「株式会社」とつくケースは「前株」、うしろにつくケースは「後株」と呼ばれます。 また、あまり知られていませんが、実は中間に入れることも可能です(例:「〇〇株式会社〇〇」)。中間に「株式会社」と入るケースを「中株」といいます。ただ、社会的には中株の会社が存在していることを想定していないため、ウェブ取引などで会社名の入力が難しいなど支障をきたす場合が多く、あまり使われていません。 2.使用できる文字や記号 ・使用可能:漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベット、アラビア数字 ・その他符号:「&」(アンパサンド)、「’」(アポストロフィー)、「,」(コンマ)、「‐」(ハイフン)、「.」(ピリオド)、「・」(中点) ・その他符号は、字句(日本文字を含む)を区切る際の符号として使用する場合に限り用いることができます。したがって、商号の先頭または末尾に用いることはできません。ただし、「.」(ピリオド)については、省略を表すものとして商号の末尾に用いることもできます(※なお、ローマ字を用いて複数の単語を表記する場合に限り、当該単語の間を区切るために空白〔スペース〕を用いることもできます)。 ・使用不可:特殊記号は商号には使用できません(例:#、@、!など)。 3.公序良俗に反しないこと 他人を侮辱したり、不道徳な内容を含んだりする商号は法律で禁止されています。 4.同一住所での重複禁止 同じ住所で同一の商号を使用することはできません。 〈商号決定の実務的ポイント〉 ・覚えやすさを重視 簡潔で覚えやすい商号は、取引先や顧客に強い印象を与えます。シンプルな名前が認知度を高めることにもつながります。 ・事業内容や理念を反映 商号に事業内容や会社の価値観を反映することで、会社の方向性をより明確に伝えることができます。 ・商標登録の確認 商号がすでに商標として登録されていないか事前に確認することが重要です。商標トラブルを避けるため、インターネット検索や特許庁の商標データベースを活用しましょう。 ・将来の展開に配慮 現在の事業に限定した名前にすると、将来の多角化や新規事業展開時に支障が出る可能性があります。柔軟性を持たせた名前が望ましいです。