子どもの「心の不調」の大半は「病気」ではない…精神科医が明かす「根本的な治療手段」
投薬よりも「かかわり」が大事
尾久:ただ難しいのは、病院も「ガチャ」だということです。たまたま出会った医師に傷つけられる可能性はなきにしもあらずなので。 鳥羽:やはりそうですよね。心療内科でぞんざいに扱われた子が、一定数いることを知っているのでそこも気になります。 尾久:「児童思春期精神科」と銘打ってるのに、やるべきことをしないところはあります。正直なことを言うと、ほとんどの子は、鳥羽さんが見たほうがうまくいくんだと思うんです。毎日、顔を見て、変化に気づける大人がマネージしてあげれば、医者は必要ない。 鳥羽:そうか。素人だからと消極的にならずに、かかわり合っていることに対してある程度自信を持っていいということですかね。 尾久:結局、心の問題を解決するために大事なことは「かかわり」だけだと言ってもいい。薬が必須な人は限られています。 鳥羽:「薬が必須な人は限られています」と言う一方で、「一度は受診を」と言うのはなぜですか? 尾久:精神科医は病気を見抜くのは得意なので、そこを判断してもらうという点では有益なんです。でも、普通の子が抱えてるトラブルや学校での悩みは、医者が解決できるものではないと思います。その子が生活している空間での人間関係の調整だから、医者の手には負えない。 もし子どもの不調が、統合失調症やうつ病なのであれば、ひとまず投薬や通院、入院が必要になるから医者にかかることも必要だということですね。 鳥羽:なるほど。子どもを受診させるかどうかの判断は、学校の先生でも悩む人が多いと思うんです。この尾久さんのアドバイスは指針の一つになるでしょう。 最近は困ったことに、子どもからろくに話も聞かずに「とりあえず病院に行きなさい」という先生も増えています。それはそれで問題です。発達障害なんかも「診断してもらったら?」と簡単に言う。 そうやって子どもの特性を枠にはめて、なんとなく解決したふうにするのはおかしい。まずは子どもと関係性をつくることにチャレンジするべきだと思うんですよ。 尾久:それは間違いないでしょう。来院した子どもの話を聞いていると「精神病じゃなくて、家庭の問題ではないか」というケースばかりです。いくら投薬したところで、家族の問題が解決しなければ根本的な治癒には至らないということなんです。