「齋藤知事への内部告発は不可解なことが多すぎる…」舛添要一元東京都知事が指摘、兵庫県政の「大いなる違和感」と「地方政治の惨状」
11月17日に行われた兵庫県知事選は、齋藤元彦前知事が再選した。知事のパワハラ疑惑、それに関連する内部告発が発端で、県政が大混乱を来したが、有権者の判断はマスコミが期待するところとは大きくかけ離れていた。その背景にある諸問題を指摘したい。 【写真】 マスコミはけっして報じない…斎藤元彦潰しを目論んだ「兵庫政界の闇」
マスコミの取材依頼を断ってきた理由
3月中旬に、西播磨県民局長が内部告発文書を報道機関や一部県議に送付したが、それを問題にした県は、5月7日に元局長を停職3ヶ月の懲戒処分にした。6月13日に、議会は百条委員会を設置したが、7月7日には元局長が死亡しているのが見つかった。 9月19日に、兵庫県議会は百条委員会を設置し、知事の疑惑の調査を始めた。そして、同日に全会一致で知事不信任案を可決した。26日に知事が自動失職し、出直し選挙への出馬を表明した。 この間、知事経験者であり、しかも任期途中で辞職した私の許には、マスコミからコメント依頼が数多く寄せられたが、ほぼ全て断った。それは、今回の齋藤知事案件を正確に判断する情報が十分に無かったからである。 そして、知事経験者から見ると、不可解なことがあまりに多かったからである。 第一に、県庁の幹部は、何か知事に問題があれば、まずは内部で副知事や知事側近に相談するはずである。知事を諫めねばならないときには、幹部が揃って知事と直談判する。 それは、官庁にかぎらず、民間の会社でも当然である。ところが、いきなり内部告発というのは、どう考えても手順が間違っていると思ったのである。 第二に、知事が県内の出張先で「おねだり」をして回ったという話である。私は、兵庫県というのは何と変わった県だと驚愕した。 私は、都知事として、島嶼部、山間部をはじめ都内各地に出向いたが、行く先々で、「これは私たちが作った素晴らしい果物です」といった具合に、まずは試食を勧められる。そして、山ほどお土産に各地の産物を頂く。知事室の職員たちに配っても配りきれないくらいである。私は、お土産の量を減らしてもらうのに苦労した思い出しかない。私は、その産物の宣伝に努めたことは言うまでもない。 そのような私の経験から、知事がおねだりしないと、特産物をお土産にもくれないとは、兵庫県民は何というケチな県民だろうと驚いたのである。