大詰めTPP 難航分野の現状と展望は?
シンガポールで、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)をめぐる閣僚会合が22日から25日まで開かれます。しかし、難しい案件ばかりが残されており、参加国の間では膠着状態が続いています。テーマごとに現状と展望を見ていきましょう。
難航分野は今こうなっている
【市場アクセス/とくに関税】日本は農産物の重要5品目(コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味自然作物)について、アメリカは自動車などについて、「例外」としての扱いを求めています。どのように折り合いをつけていくのか、交渉の行方に注目が集まっています。 【原産地規制】TPPでは参加国でつくられた製品の関税を、原則ゼロにすることをめざしています。しかし、工業製品の場合、部品や原材料をTPP参加国内で調達するケースもあれば、参加国以外の国や地域から調達するケースもあります。どこまで優遇対象とするかで、駆け引きが続いています。 【貿易救済措置】輸入が急増したとき、国内産業を守るためのセーフガード(緊急輸入制限)が求められる場合があります。日米間ではTPP交渉と併行して、日本車の対米輸出が急増した際のセーフガードについて、協議が行われています。 【知的財産】アジア諸国では、特許が切れた薬と同じ成分を使ってつくるジェネリック医薬品が、重要な役割を果たしています。日本の新薬の特許期間は25年ですが、アメリカは延長を求めており、アジア諸国は反対しています。また、アメリカでは著作権の期間を著作者の死後70年としており、他国にも足並みをそろえるよう、求めています。アジア諸国は、長期の著作権設定には反対しています。日本でも著作者の死後50年とする国内の法律とずれが出る上、長期の著作権にこだわるとビジネスチャンスを逃す怖れもあるため、賛成していません。なお、模造品については、取り締まりを強化する方針です。 【競争政策】アジア諸国、とくにベトナムやマレーシアでは国有企業のGDPに占める割合が大きく、国民の暮らしとも密接に結びついています。また、ブルネイには王族企業が数多くあり、マレーシアではマレー系・中国系・インド系の3民族のうちマレー系住民を優遇するといった独特の制度もあります。こういった点について、アメリカはだれもが同じ立場で競争できるよう、産業政策の透明性を高めるべきだと主張しています。しかし、アジア諸国から見れば、社会の激変や内政の混乱につながる怖れがあるため、慎重な姿勢を崩していません。