「やる気やモチベーション」に頼らない!仕事をやり切るための4つの秘訣
その2:「やる気がでやすい方向」に比較をする
こうして着手すれば、物事が前に動きはじめますが、どこかの時点で意欲を失ってしまうこともあるかもしれません。 こういうときに多くの人は、これまで進んできた道のりと、これからゴールラインにたどり着くため必要な道のりを比較するのですが、Kapur氏は、逆方向に比較することをすすめています。 たとえば、「20往復泳ぐ」という目標にはまだほど遠いところにいるとしても、「もともと1往復だけのつもりで来たんだ。それなのに5往復もしているじゃないか」と言うことができるのです。こうした比較をすれば、人間の心理として、「まだあと15往復泳がなくてはならない」と思うよりも、続けるモチベーションが湧いてきます。このテクニックは、「目標勾配効果(goal gradient effect)」と呼ばれます。やればやるほど、達成したいという気持ちが高まる、ということです。 一般に、たゆまずに取り組み続けるほど、完成させたいというモチベーションは高まります。 ただし、どういう比較方法を使うかは、現時点で目標をどこまで達成しているかによって変わってきます。 たとえば、100ページの本を読破したいと考えていて、今20ページまで読んでいるとしましょう。こういうときは、「スタートしてからどこまで読み進めたか」を振り返るほうが、次の21ページ目を読もうという気持ちになりやすいはずです。 でも、すでに80ページまで読み終えているなら、読みはじめたときと比較しても、もう1ページ読もうというモチベーションは湧きにくいでしょう。 この場合は、「目標を達成した状態と、今の状態を比較したほうが、80ページから81ページへと読み進めやすくなります」とKapur氏は解説します。残りはわずか20ページなので、ここでもう1ページ読めば、20分の1進んだことになるからです。
その3:失敗を「損」としてとらえない
あまり面白くないテレビシリーズでも、「もう3、4エピソード見てしまったから」という理由で見続けてしまったことはありませんか? たしかに時間のムダかもしれませんが、それほど実害はありません。 でもこれが、かなりの年月とお金を費やしてスキルを磨いたあとで、自分が選んだキャリアに満足できていないことに気づいたとしたらどうでしょう? 物事の大小を問わず、「すでに時間やリソースを注ぎ込んでしまったから」という理由で、自分がはじめたことに固執する行動は、「サンクコスト(埋没費用)の誤謬」と呼ばれます。これは、「損をしたくない」という欲求と結びついた行動です。 これ以上がんばったところで、さらに時間とエネルギーをムダにするだけのように思えますが、実は、サンクコストの原理をモチベーションハックに利用することができます。 この点を説明するのに、Kapur氏は「10回洗車すると1回無料」になるサービスクーポンの例を挙げました。 すでに2回洗車したあとにサービスクーポンをもらった場合と、まだ1回も洗車していない時にもらった場合を想像してみてください。同氏は次のように説明しています。 おそらくは、すでに何回か利用していた場合のほうが、クーポンをコンプリートする可能性が高くなるでしょう。一度はじめたものは、続けたいと思いがちだからです。 同じことは、向かない仕事に就いているなど、失敗だと思っているタスクについても当てはまります。 すべてを失敗だと見るのではなく、すでに成し遂げたことに目を向け、どこを変えれば正しい方向に軌道修正できるかを理解すれば、目標を追求し完遂するためのモチベーションになるでしょう。 Kapur氏は次のように言っています。 失敗に終わったアイデアや発言、解決策は、その1つ1つが、「新しいことを学ぶ」という目標に向けて一歩進んだことを示しています。(先ほどのクーポンの例を使うなら、)心の中のサービスカードに押されたスタンプなのです。1つ1つのスタンプに価値があり、賞賛されるべき努力の証です。何かを学んでいる人は、自分はゼロからはじめているわけではなく、以前に学んだ関連する知識があることを悟るでしょう。でもその知識は、活性化され、抽出され、心の中のカードに刻まれる必要があるのです。