試してみよう、つらい気持ちが少し楽になる魔法の言葉 #今つらいあなたへ
まず一つ目は『セルフモニタリング』です。これは、自分自身のことを「何があったのか(行動)」「その時どんな気持ちだったか(感情)」「その気持ちになったのはなぜか(認知)」という三つの軸で振り返ってみることを指します。少し分かりにくいので、具体的な例で考えてみましょう。例えば、あなたはお母さんに「宿題したの?」と言われて嫌な気分になり、喧嘩をしてしまったとします。「もう一人の自分」の視点で状況を振り返り、三つの軸に沿って考えてみると……。
・何があったのか(行動) →お母さんに「宿題したの?」と言われたので、「今やろうと思っていたのに!」と強く言い返し、喧嘩になってしまった。 ・その時どんな気持ちだったか(感情) →ムカムカした。 ・その気持ちになったのはなぜか(認知) →宿題をしないといけないことは自分が一番よく分かっていたのに、先にお母さんに言われてしまったからムカムカした。
二つ目は、『セルフコントロール』です。これは、『セルフモニタリング』で整理してみた三つの軸を眺め、「自分は何を変えることができるかな?」と考えてみることです。 先ほどの例に対しては、こんな風に考えてみることができるかもしれません。 ・ムカムカした時はそれを抑えるために、6秒数えて冷静になってみよう。 ・次からは、言われる前にやっておくようにしよう。 ・「宿題したの?」といちいち聞かれるのは嫌だと、あらかじめお母さんに伝えておこう。 ・家ではなかなか宿題をする気分になれないから、学校の図書館で済ませてこよう。 このように自分で考え、変化を起こすことはとても大事です。またそれは、大きな変化じゃなくて、小さな変化で構わないんですね。何をどう変えてみることができるか、自分に問いかけてみてください。重く考えてみる必要もありませんので、練習のつもりでやってみるといいですね。
何よりもまず「気づく」こと
鹿嶋真弓: 自分の心が「何か」に囚われてつらくなってしまった時は、その「何か」について考え、認識してあげることがすごく大切なんです。 得体の知れない、目に見えない、よく分からないことでモヤモヤして苦しむことは、とても疲れます。逆に「これだ! これが原因で自分はつらいんだ」「このことがあるから困っているんだ」と気づいていくことが、とても重要になってきます。 『魔法の言葉』を使うことや、『メタ認知』を意識してみることは、気づきへの一歩となりますので、この機会にぜひ知っておいてもらえればと思います。 ====== 鹿嶋真弓(かしま まゆみ) 立正大学心理学部教授、TILA教育研究所副代表。専門は学級経営、カウンセリング科学。都内の公立中学校、逗子市教育研究所、高知大学教育学部を経て、2019年4月より現職。2016年9月にはTILA教育研究所を設立。現在、教師の指導行動改善のための『蓄積データ』、主体的対話的で深い学びのための準備体操『ひらめき体験教室』、『子どもの言葉で問いを創る授業』など広く教育現場に活かせるワークショップを展開中。