なぜスピードスケート女子500mで2人の明暗が分かれたのか…不出場も検討の高木美帆が銀、連覇挑戦の小平奈緒は痛恨ミスで17位
3連覇を小平に阻止された前回平昌五輪。ライバルであり、親友でもあった勝者にねぎらわれ、肩を抱き寄せられながら一緒にリンクを回った姿は世界中に感動を与えた。 挑まれる選手が抱く心境を、李相花さんは誰よりも理解している。その上で再び五輪の舞台に戻ってきた小平を、親友としてメールなどで励まし続けてきた元金メダリストは、韓国の視聴者へ向けて「前に滑った選手が素晴らしい結果を出していたので、後に出てくる選手たちへの負担が大きくなった」と女子500mを総括した。 予期せぬミスが原因で敗れたとはいえ、小平が前回大会で更新した女子500mの五輪記録36秒94は、4年後のミラノ/コルティナ・ダンペッツォ五輪へ引き継がれる。 李相花さんが「素晴らしい」と言及した高木の滑りを振り返れば、全30選手が滑り終えた後でも、銀メダルという結果に加えてさらに異彩を放つ項目があった。 100mに続く400mにおける高木のラップタイム26秒71は、金メダリストのジャクソンと並んで最速にランクされた。他に26秒台を記録したのは銅メダリストのゴリコワ、高木と同走だった4位のバネッサ・ヘルツォーク(26、オーストリア)、5位のユッタ・レールダム(23、オランダ)の3人だけ。小平は27秒37だった。 平昌五輪の団体パシュートで金、1500mで銀、1000mで銅メダルを獲得した高木は、2019年には1500mで世界記録を更新。名実ともに中長距離のエースになったなかで、未知と言っていい種目でもあった500mには、直近になって葛藤を覚えていた。 「正直なところ、1500mが終わった段階で団体パシュートのことを考えたときに、この500mに出るかどうかを本気で考えたというか、この500mに強い気持ちで挑めるかどうかをもう一度、自分のなかで問いかけた時間はありました」 競技後にはこんな自問自答があったと高木は明かした。500mをはさんで団体パシュートが組まれている日程とチームを第一に考えれば、連覇へ向けてリスクを減らしたい。それでも高木を突き動かしたのは、短距離から長距離までのすべての種目をハイレベルで滑るオールラウンダーに強くこだわったからに他ならない。 特に専門性が高い500mへの挑戦に対しては、当初はナショナルチームの首脳陣をはじめとする周囲から難色を示された。それでも挑戦する過程がすべての面で成長に、速く滑れる自分につながっていくと信じた。究極のオールラウンダーになった先に待つのは、子どものころから憧憬の念を抱いてきた、カッコいいスケーターとなる。