なぜスピードスケート女子500mで2人の明暗が分かれたのか…不出場も検討の高木美帆が銀、連覇挑戦の小平奈緒は痛恨ミスで17位
そのなかで第13組に、前回平昌五輪金メダリストの小平が登場した。 「スタートラインにつくまではいい状態で、集中力もかなり高まっていたんですけど」 しかし、連覇をかけた挑戦は一歩目で暗転してしまう。号砲の直後に踏み出した左足が氷にひっかかるような状態になり、100mで10秒72と大きく出遅れた。 焦燥心と絶望感が交錯するなかで、全体で2位となる10秒33で飛び出し、37秒21で銅メダルを獲得したアンゲリナ・ゴリコワ(30、ROC)を懸命に追う。 しかし、わずかなミスが致命傷になる500mで、スタート直後のタイムロスはなかなか挽回できない。38秒09というタイムに、それでも必死に言葉を紡いだ。 「自分の思うようなレースができなかった。一歩目でつまずいてしまって、そのあたりから頭のなかが本当に真っ白になってしまいました」 五輪金メダリストという肩書きを新たに背負った4年間。周囲から寄せられる期待がいつしかプレッシャーに変わり、理想と現実の間でもがき苦しんだ。左股関節の故障が追い打ちをかけ、昨シーズンの前半戦には国内で5年ぶりに黒星を喫した。 一時はリンクを離れて、フィジカルを一から作り直した時期もあった。その過程で決して守りに入らず、挑戦者として4度目の五輪を目指そうと決意。愛してやまないスケートへ「無心で体を委ねて没頭する」という境地にたどり着いた。 「この舞台に立てていること自体が本当に幸せだと感じている。氷と仲よくしよう、と常に意識してきましたけど、こういうときに失敗してしまうのは、また何かここで気づかなきゃいけないサインなのかなと思っています」 胸を張って気丈に答えた小平のレースを、2010年バンクーバー、2014年ソチ両五輪の女子500mを制した韓国のレジェンドで、2019年に引退した後は解説者を務める李相花さんは、国家スピードスケート館のテレビ中継席で号泣しながら見つめていた。