大竹しのぶ&多部未華子『インサイド・ヘッド2』インタビュー 表現者として必要な感情を一つ選ぶなら?
世代は違えど、どこかこの二人は似た空気感を持っている。突出した演技力と存在感を誇りながら、役というヴェールを脱ぐと、少女のように可憐であどけない。大竹しのぶと、多部未華子。まさに女優になるべくして生まれてきた稀有な表現者だ。 そんな二人が、ディズニー&ピクサーの最新作『インサイド・ヘッド2』で吹き替えを務める。大竹は前作に続きカナシミ、多部は本作から新たに加わったシンパイというキャラクターに、持ち前の豊かな表現力で息吹を与えた。 これまでさまざまな作品を通じて無数の感情を演じてきた大竹と多部。その才能と感性を支えてきた感情とははたして何だろうか。 【撮り下ろし写真多数】監督としてアカデミー賞長編アニメーション賞を最多受賞しているピート・ドクターも吹替を大絶賛した多部未華子と大竹しのぶ
大竹さんはお芝居を始めると化け物に変わるんです
──お二人はこれまで舞台などで共演されてきました。お互いに対してどんな印象をお持ちですか。 大竹:多部ちゃんとは『ふくすけ』(2012年)で初めてご一緒したんですけど、そのときはすごいおとなしかったよね。 多部:基本的にずっとおとなしいです(笑)。 大竹:そうだね。どっちかと言えば、ワーワーと話すタイプではないけど、話すとなんだかとっても面白くて、可愛いんです。 多部:私にとって大竹さんは小さい頃からずっとテレビで見てきた方なので、初めてお会いしたときは思わず「あ、本物だ!」と思いました(笑)。 大竹:そうなの?小さい頃からって(笑)。 多部:バラエティにもよくお出になっていたので、話し方とか雰囲気とか、ざっくりとしたイメージはあって、本当にテレビのままだなと。でも、お芝居を始めるとガラッと雰囲気が変わる。化け物に変わるんです。 大竹:化け物(笑)。 多部:言葉が強くてすみません(笑)。本当に化け物しか言いようのない存在感で。でも、お芝居が終わると、またふんわりほんわかした大竹さんに戻る。すごい方だなとずっと尊敬しています。 大竹:私から見ると多部ちゃんはいつも冷静。困っている様子を見たことがない。だから、つい頼りにしちゃうみたいなところがあって。 多部:本当ですか。 大竹:『ふくすけ』のときも、ダンスができなくて。でも多部ちゃんは上手なので、いつも「どうすんだっけ?」「ここはどうだった?」と聞いていました。頼れる後輩みたいなところはあります。 ──今回、お互いの吹き替えを聞いてみての感想もぜひ伺わせてください。 多部:前作を拝見していたので、「あ、カナシミだ」と思いました(笑)。今回、カナシミと話をする場面があったのですが、ずっと聞いていたカナシミの声とシンパイとしてしゃべれるのは楽しかったです。 大竹:私が演じるカナシミは話すテンポがゆっくりで、言葉数もそんなに多くはなくて。だから、アフレコのときもそんなに困ることなく口の動きと合わせることができたんですけど。多部ちゃんの演じるシンパイはとにかく台詞量が膨大で大変だったと思います。 多部:そうなんです。シンパイって心配ごとを回避するためにとにかく一生懸命喋るんです。 大竹:それをスピード感を持ってやらないといけない。これってとっても難しいんです。 多部:しかもオリジナル(米国版)の声がハスキーで。私はハスキーではないので、オリジナルのような声を出すのは難しい。ハスキーではないけど、私なりのシンパイってどういうものだろうって、いろいろ考えて行き着いた結果が今回のシンパイの声なんですけど。あの癖のある声で、しかも早口で感情を出し続けるのが難しくて。これは本当にできているんだろうかという不安と戦いながらのアフレコでした。 大竹:そんな不安を感じさせないくらい素晴らしかったです。大変なことを見事にやってらっしゃるなってびっくりしました。