大竹しのぶ&多部未華子『インサイド・ヘッド2』インタビュー 表現者として必要な感情を一つ選ぶなら?
大人になるということは素敵なことだと改めて思った
──本作では、ティーンエイジャーになったライリーに<大人の感情>が芽生えはじめます。今まで味わったことのない感情に振り回されるのは多くの人にとって通過儀礼。大竹さんや多部さんも思春期の頃にそんな経験をしたことはありますか。 大竹:私は16歳くらいからこの仕事を始めていたんですね。周りにはたくさん大人がいたので、いい子でいなくちゃとか、人からよく思われたいとか、理想の自分を頭の中でつくって、それに自分自身が縛られるみたいなところはあったかもしれない。 多部:ちょっと背伸びしたい年頃だったのは覚えています。周りの大人たちから質問されたことに対して、こう答えたらカッコいいかなって考えてみたり。映画の中でライリーが部活の先輩から好きな音楽を聞かれて、このバンドの名前を出したら子どもっぽく思われるかなとか、いろいろ考えるじゃないですか。あの感覚は私もよくわかるなと思いました。 大竹:そうなんだ。私は全然考えたことなかったから。 多部:もう細かくは覚えていないですけど、そういう日常の中の何気ない感情の揺れというのがあの頃にはあったと思うし。今振り返ってみると、そのすべてが成長の過程の一つだったんだなって、ちょっといとおしくなりますよね。 大竹:うん。感情の種類が増えて複雑になった分、面白いと感じることも増えた気がする。だって、本当に小さな頃は心配ごとなんて何もなかったし、人を羨むこともなければ、自分を恥ずかしいと思うこともなかった。でも、そういう感情が自分を豊かにしてくれる。だから大人になるということは、悩むこともあるけれど、素敵なことなんだと映画を観て改めて思いました。 ──多部さん演じるシンパイは、最悪の将来を想像して、あたふたと必要以上に準備をしてしまうキャラクターです。お二人にもこうしたところはありますか。 大竹:私はまったくないんです。確かに将来のことなんて何もわからないけど、なるようになるさって思っちゃう。それは小さいときからずっとそうです。 多部:私は逆です。こうなったらどうしようというのをあれこれと考えてしまうタイプで。 大竹:えー。そうなの? 多部:でも最終的に面倒くさくなって、ダリィってなります(笑)。そうなったらもうあとは何とかなるかって開き直る。 大竹:それでいいと思う。わからないことがあったらわからないって言えばいいし、できないことを言われたらできないって言えばいいもの。 ──クランクインの前の日とか、稽古初日の前夜とか、眠れなくなるなんてことは……? 大竹:ないです(笑)。 多部:寝られますけど、心配だし、不安です。 大竹:あー、逆だ。私はずっとワクワクしてます(笑)。 多部:さすが大竹さんです。 大竹:じゃあ、多部ちゃんはそういうときどうするの? 多部:言っちゃいますね、共演者の方に。「すごい緊張してます」とか。口に出して伝えてしまうと、ちょっと気持ちが楽になれるというか。 ──大竹さんみたいにポジティブになるにはどうしたらいいでしょうか。 大竹:え~? 楽しいことを考えたらいいんじゃないかな。生きてると楽しくないこともあると思うんですけど、そういうことをやるときも何か一つ楽しいことを見つけてみる。それは結構得意かもしれませんね。 ──舞台の本番で台詞が飛んだらどうしようとか考えません? 大竹:ないですね。 ──よく役者さんは台詞が飛んだ状態で舞台に立つ夢を見る、なんて言いますけど。 大竹:見たことないです。 多部:本当ですか? 大竹:え? ある? 多部:あります。でも確かに大竹さんはずっとルンルンされている印象があります。本番前も袖とかでずっとルンルンされてる(笑)。 大竹:1回だけそういう夢を見たことがあるんですけど、そのときはさあ舞台に出ようと思ったら、お姑さんが来たっていう夢で。出番まで5分前なんだけどなと思いながら、お姑さんにお茶を入れて。すみません、ちょっと出番なんで行ってきますって舞台に飛び出したら、歌舞伎だったの(笑)。 多部:あはは! 大竹:これ歌舞伎じゃん、と思って。どうしよう、お稽古してないし、歌舞伎なんてできないよ~と思いながら見得を切るっていう夢を見て。図々しすぎるなと、起きてから反省しました(笑)。 多部:大竹さんは、見る夢のクオリティが私たちと違いますね(笑)。