大竹しのぶ&多部未華子『インサイド・ヘッド2』インタビュー 表現者として必要な感情を一つ選ぶなら?
悩む時間があるならもっと自分の人生に夢中になったらいい
──本作には「どんな自分も受け入れる」というテーマが流れています。お二人は自分自身のことは好きですか。それともあまり好きではないですか。 大竹:好きではない、ということはないと思います。もちろんダメな自分がいっぱいいることもわかっていますけど、これもまあいいかと思っているかも。だから進歩がない。 ──大竹さんは、コンプレックスとどう向き合っているんでしょう。 大竹:コンプレックス……? え、コンプレックスって……? ──もしかしてあまりコンプレックスというものがないとか。 大竹:容姿とか体型とか、もっとこうだったらいいのにっていう不満は勿論あります。でも、それに対して特に努力をしていないってことは、大して思っていないんだろうなって。 多部:反省点はいろいろありますけど、それも自分だと思っているので、あんまり直そうとはしていないかもしれません。というか、30(歳)を過ぎたら直せないので、開き直るしかないという境地にいるのかもしれないですけど。 ──年齢が処方薬になるところはありますよね。とすると、若い頃はどうしていたのでしょう。 多部:私は自分の悩みとか、ここがダメだなと思ったところは、友達に話すようにしていました。そうすると、周りが励ましてくれるじゃないですか。そこで、自己肯定感を高めていた部分はあったかな。 大竹:そうだよね。わかるわかる。 多部:自分で自分のダメなところを直すことはできないけど、それでいいんだと思える強さをそうやって少しずつ身につけていったというか。 ──映画に出てくる<大人の感情>のイイナーじゃないですけど、どうしても人と比べて、自分にないものを持っている人を羨んでしまいます。 大竹:羨ましいなとか、すごいなとか、そういうのはありますけど、だからと言って、それで自分が落ち込むっていうことはないんですね。 多部:それこそ20代の頃は、同世代の俳優さんが自分の出たかった作品とかやりたかった役をやっているのを見て落ち込んだりもしましたけど、結局生きてきた環境も違うし、性格も違うし顔も違うから仕方ないっていう結論になるんですよね。 大竹:運もあるしね。自分を責めたら、自分が可哀相。 多部:そう思います。反省はしたほうがいいときもあるけど、自分を責めるのは良くないのかなと。 大竹:私なんてって考えすぎたら、それこそ心の中がカナシミでいっぱいになっちゃう。そんな生き方は暗いじゃない? だったら自分をヨロコビのほうに持っていったほうがいいと思う。それにね、私は思うんだけど、結局他人のことを気にするのって余裕があるのよね。自分にいっぱいいっぱいになっていたら、他の人なんて目に入らない。あれこれ悩む時間があるなら、もっと自分の人生に夢中になったらいいんじゃないかな。 多部:確かに。それが一番ですよね。 ──映画の中にはヨロコビ、カナシミ、イカリ、ビビリ、ムカムカ、シンパイ、ハズカシ、イイナー、ダリィという感情が出てきます。表現者は感情が財産。どれも必要な感情だとは思いますが、あえて一つ表現者にとって必要な感情があるとしたら、それは何だと思いますか。 大竹:表現者として? え~、難しいなあ……。 多部:大竹さんの答えがめちゃくちゃ知りたいですね、私は。 大竹:難しい……。(と、15秒ほど悩む) 多部:(そんな大竹を見て)全然違う質問していいですか。恋愛をしたとして、フられたときに輝く人と、彼氏がいるときに輝く人がいると思うんですけど、大竹さんはどっちですか。 大竹:えー。それはいるとき。 多部:いるときですか。私はいないときです。 大竹:えー! どうして? 多部:カナシミの感情を持っているほうが輝く気がするんです。悲しいなって思ったり、憂いている自分がいたほうが仕事がうまくいくことが多い気がして。 大竹:確かに。一つだけ必要なものを挙げるとしたらカナシミなのかも。カナシミを知っているほうが優しくもなれるし、ヨロコビにも結びつくし。あともう一つ考えたのは、ハズカシだったんですけど。 ──恥ずかしいという気持ちも必要なんですね。 大竹:お芝居って、普段の自分ならまったくやらないようなこともやらなくちゃいけない。そのときに恥ずかしいなって思う気持ちはもちろんあるわけです。でも、その壁をぶち破ることで辿り着く場所がある。新しい表現を追求していくという意味では必要かもしれないですね。 ──では最後にお二人のインサイド・ヘッド(頭の中)を占めている感情を教えてください。 大竹:多部ちゃんヨロコビだよね? 多部:ヨロコビですね、今は。 大竹:子どもがいるとそうなるよね。 多部:毎日楽しいです。育児が日常の大半を占めている分、仕事が貴重な時間になっていて。今日みたいに1日お仕事という日がすごく新鮮で、今日もワクワクしながら来ました。かといって育児がつまらないかというと、まったくそんなことはなくて、毎日がすごく楽しいです。 大竹:そうだね。 多部:これから家に帰って明日の準備のことを考えると大変だけど、それはそれで楽しい。今はもう毎日がヨロコビです。 大竹:素敵。私はダリィかな(笑)。 多部:あはは! 大竹:ダリィ、ヨロコビ、ダリィ、ヨロコビ。毎日その繰り返しです(笑)。