サーベルタイガーのミイラを初めて発見、ついに本当の姿が明らかに、「大興奮」と研究者
現代のネコ科動物にはいないタイプ
専門家によるこのミイラの研究は今後しばらく続くはずだ。 比較する対象になる現存の種がいない氷河時代の哺乳類としては、世界初の標本だ。マンモスなどの大型動物の狩りを得意としていたサーベルタイガーは、気候変動や人間の活動によって大型の獲物が姿を消したのに伴い、絶滅した。現在、サーベルタイガーのような狩りをするネコ科動物はいないため、ミイラの軟組織は、これまで骨から想像するしかなかった古生物学者に、新たに多くの詳しい情報をもたらしている。 ミイラの小さな足からですら、新たな発見がある。 「足の肉球はライオンよりもかなり丸い」とレイノルズ氏は指摘する。また、現代のネコ科動物にはある手根球(しゅこんきゅう。足の先端から少し離れた場所にある)がこのミイラにはない。理由は不明だが、こうした差異を調査すれば、サーベルタイガーと現代の大型ネコ科動物との違いが一層明らかになるかもしれない。 ホモテリウムとその近縁種は、単なる「牙の長いライオン」ではなく、今とは違うさまざまな大型動物が生息していた非常に異なる世界の中で進化した捕食動物だ。冷凍状態で見つかったミイラは、サーベルタイガーが大草原を歩き回っていた時代を私たちに実感させてくれる。
文=Riley Black/訳=夏村貴子