「運だけ」の野次も…変貌遂げるサッカー伝統校 「たぶん全国で一番」の自負と得難い人生経験【コラム】
選手主体のボトムアップ方式を採用する堀越高校、2年連続で選手権ベスト8入り
選手主体のボトムアップ方式で活動する堀越高校が、2年連続で高校選手権ベスト8入りを果たした。ベスト4まで勝ち上がった昨年度の最終ライン4人とアンカー(今年度はボランチ)がそのまま残っていたことを考えれば、国立へ進めなかったことには一抹の寂寥感が残ったかもしれない。しかし反面、最近5年間で3度もベスト8以上という安定感と勝負強さは「強豪校の仲間入りをしてきた」という佐藤実監督の手応えを十分に裏付けている。 【動画】38分でハット達成…堀越の2年生10番が決めた”右・左・頭”衝撃ハットトリックの瞬間 そもそも堀越は、あえて遠回りをしながらも、結果以上に成長を追求してきたチームだ。かつて勝利至上を競った高校サッカー界では、絶対君主の監督が卒業までの3年間で休みなく理不尽も含めた過酷なトレーニングを課してきた。決断はすべて指揮官が下し選手は従うしか選択肢がなく、またそれが伝統となっているからチームの方向付けは早かった。 それに対し堀越では、キャプテンが主導(ファシリテート)して下級生も含めた選手たちの声を吸い上げ闊達な議論を促しながら結論を導いていく。ただしその分、全員が理解、納得して真剣に取り組むから、まとまり始めるとチームのパフォーマンスが加速する。シーズン前半は振るわなくても、徐々に選手権へ向けて仕上げていくのも「敗戦も必要な経験値として積み上げ」(佐藤監督)栄養にしていくからだろう。 最近5年間で4度全国選手権の切符を手にした堀越だが、いずれも結末は力負けだった。逆にそこまでの接戦はすべて勝ち抜いているわけで、この勝負強さは伝統にもなりつつある。例えば今回の2回戦の津工業戦も、後半に均衡を破るまではどちらにもチャンスが訪れる拮抗した状態が続いた。それでも「しっかり守る時と前からかけられる時をピッチ上の選手たちが共有することで」(佐藤監督)打開への道を切り拓いていった。 「結局最後に一番なんとかしたいのは選手たちです。逆に監督が分析をしてプランを立て采配をふるっていると、エラーが起きて上手くいかないことも多い。競った試合をモノにしてしまう彼らには底力があるし、改めて本当に凄いな、と思います」(同監督)