日経平均2万5000円を阻むのは米国株?
筆者は2018年の日経平均見通しを2万5000円としています。世界経済が好調に推移する下、本邦企業業績は2桁近い増益が見込まれることに加え、各国中銀の緩和的な金融政策が株価上昇に貢献すると見込んでいます。
「円安なき株高」予想時に注意すべきこととは?
詳細については「2018年も『円安なき株高』を予想」12日8日付のコラムを参考にしていただきたいのですが、この予想にも当然のことながらダウンサイドリスクがあります。気になるのは米国連邦準備制度(FRB)の金融引き締めによる米国株下落です。現時点でFRBが計画している2018年3回の利上げが4回に変更されたところで、さほど大きな混乱は招かないと思われますが、米国の株価バリュエーションがITバブル期に次ぐ水準まで上昇するなか、米国株がリスクオフに脆弱になりつつあることは認識しておくべきです。 米国株をシラーPERという長期のバリュエーション指標で評価すると、目下の株価は明らかに割高と言っても過言ではありません。この点は、多くのエコノミストが指摘していますし、政策当局も同様の問題意識を持っているとみられます。FRBは伝統的に「金融緩和の結果、資産価格が大幅な上昇を示したとしても、それを金融引き締めによって阻止する必要はない」はというスタンスを基本としており、バブルの発生を未然に防ぐような金融引き締めに距離を置いています。 しかしながら、2000年代の住宅バブルの結果としてリーマンショックという苦い経験をした以上、それを教訓にバブルを警戒する姿勢に舵を切ってくる可能性も完全には否定できません。これまでの複数回の政策金利引き上げにもかかわらず、長期金利が低位で安定し、株価バリュエーションが切り上がっていることについて、FRBの高官が懸念を表明したり、連邦公開市場委員会(FOMC)声明文や議事要旨で強い警戒感が示される可能性はあります。資産価格の上昇に寛容なイメージがあるFRBが株価上昇に懸念を示せば、株式市場が混乱する可能性が高いと言えます。金融引き締めの予想が広がり、金利が上昇(債券価格下落)すれば、株式の相対的な割高感が強まります。 現時点で株式配当利回りは2%近傍、10年金利は2%台前半で大きな差はありませんが、金利が上昇した場合は注意が必要です。
(第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一) ※本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。