BtoCとBtoBでは「UXリサーチ」どう違う? マネーフォワードが実践する「顧客体験の改善手法」
インタビューの席では、話しやすい雰囲気作りを心がける。聞き手はメインのインタビュアー、それをフォローするサブインタビュアー、議事録係の最低3人は同席したい。ただし、人が多すぎると回答者は萎縮するので、視界に入るのを1人にしたり、面接的な雰囲気を出さないように斜め位置で対話するなどの配慮もすべきという。
┌────────── 私の経験上、インタビューの様子はBtoBとBtoCどちらの領域でも、プロジェクトの決裁者なら絶対に見るべきだ。実施報告書に目を通すのもいいが、現場の生の声のほうが、ペインを掴むのに役立つ。難しければ動画でも構わないので見てもらいたい(古長氏) └────────── ■ 3. エスノグラフィ(行動観察)
インタビューだけでわからないことを把握するための手段が、エスノグラフィである。ユーザーの行動・環境を実際に観察して、ユーザー指針が言語化しきれていないニーズやペインを探っていく。
┌────────── 特にBtoBで顕著なのだが、本当は困っているのに『これが仕事なのでやっています』というように、使命感の強さのせいでペインをペインと感じていなかったりする。だからこそ第三者の目で見て、深掘りする(古長氏) └────────── これまでのリサーチでわかっている業務フローを最新化し、観察するシナリオやシーンを選定し、注視すべき課題やタスクを選び、ユーザーをリクルーティングするなどの下準備をしっかりしておく。
エスノグラフィにあたっては「POEMS」と呼ばれる観察メモのフレームワークがよく知られており、これを活用する。People(人々)、Objects(目的)、Environments(環境)、Messages(メッセージ)、Services(サービス)の5つの要素からなる。
観察メモは、下記のようなフォームを作り、都度記録していく。一例として営業支援システムの改善にかかる観察内容が記述されているが、「日差しのあたる場所でタブレット操作」であったり、「ボイスレコーダーを併用」といったあたりはまさにエスノグラフィの効果。回答者にとっては当たり前すぎて、インタビューで言うべきと考えつかないものを、観察を通じて発見するのがエスノグラフィの意義だ。