ライバル企業がまさかのタッグ 環境問題や人手不足を前に、広がる「協業」
客も宅配便も載せるバス
地方では「信書」以外の協業が始まっている。人口約1100人の宮崎県西米良村(にしめらそん)では昨年3月から、日本郵便、ヤマト運輸、佐川急便の3社による宅配便や郵便物の共同配送がスタートしている。 配送は、村が運営するコミュニティーバス「やまびこ」を活用。「ホイホイ便」と名付け、乗客と荷物を一緒に載せて運ぶ。村の輸送サービスと運送事業者の配送の両方の効率を上げる狙いがある。この「貨客混載」は、2017年の国の規制緩和をきっかけに、人口減少に悩む地域で広がっている。 ホイホイ便は、村の中心部から高齢化率が高い小川地区までの21キロを一日3往復する。小川地区に到着すると、村から委託された配達員が各戸に荷物を配る。中心部に戻る時は地区の郵便ポストから回収した郵便物を運ぶ仕組みだ。
村によると、配達員は月に約1200個の郵便物と荷物を運ぶが、このうちホイホイ便で扱うのは約65個だという。朝一番の郵便物は、配達員が直接郵便局で受け取り、配達するため数字に差が出ている。 西米良村むら創生課の黒木世巨氏は「各社のドライバーは荷物が1個でもそれぞれ配達していたので、負担が大きく減ったはずです。過疎地の輸送サービスの一つのモデルケースになれば」と期待する。
「1社だけで解決できる時代は終わった」
競合から協業に舵を切る企業の動きを、専門家はどうみているのだろうか。大阪大学大学院経済学研究科の中川功一准教授は、「日本で競合企業がタッグを組む大きなきっかけになったのが2011年の東日本大震災」と説明する。被災地に食品や日用品を運ぶため、メーカーや物流企業が協力した。 「経営学では社会に求められるものを企業がつくっていくことを『CSV(Creating Shared Value=共通価値の創造)経営』といいます。ここ数年でCSVが加速しています」。中川准教授が教える学生たちも、社会貢献度の高い企業への就職を希望する学生が多いという。 投資家の目も厳しくなってきている。環境(Environment)や社会課題(Social)、企業統治(Governance)に取り組む企業に投資する「ESG投資」は日本でも活発になっており、日本サステナブル投資フォーラムによると、2019年の日本の機関投資家によるESG投資を中心とするサステナブル投資の残高は約336兆円と、前年比で1.45倍にも増えた。