ライバル企業がまさかのタッグ 環境問題や人手不足を前に、広がる「協業」
詰め替えパックのリサイクルが進むには、技術の開発に加え、小売店や行政のサポートも必要になってくる。日本では使用済みのプラスチック容器の回収は、市町村など自治体が行っている。回収量を増やすには、ボックスを設置する小売店と回収する自治体の連携も不可欠だ。 花王とライオンは2025年には年間1万トンの詰め替えパックの回収を目指す。これは国内の詰め替えフィルム容器の約2割にあたる数字だ。 花王のマテリアルサイエンス研究所の南部博美・副所長は「『ジャパンモデル』をつくり、リサイクルを再定義するぐらいの気持ちで臨みたい」と意気込む。
物流分野でも企業が協力
ライバル企業の協業は、物流の分野が一歩先を進む。 「ドライバー不足で、物流がひっ迫していると言われています。でも営業用トラックの積載効率は、じつは4割ほどなんです」 流通経済研究所の折笠俊輔・主席研究員が話す。積載効率とは、トラックの荷台に載せることができる最大量に対し、実際に積む貨物の割合を指す。 「東京から地方に向かうトラックの積載量は多いんです。でも、地方から東京に戻る時の荷物が少ない」。コロナ禍による巣ごもり需要で、宅配などの物流がひっ迫していると言われるが、物流全体で見ると荷台の6割が空気を載せて走っていることになる。 この無駄を減らし、1回の運送で多くの荷物を運ぶことができれば、ドライバー不足の解消や二酸化炭素(CO2)排出量の削減につながる。
コンビニ3社の実証実験
昨年8月、東京都江東区の大型物流倉庫からトラックが出発した。荷台にはセブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートのドリンクや菓子、日用品などが積まれている。 ライバルの大手コンビニ3社が、共同配送で手を組んだ実証実験だ。経済産業省が主導し、流通経済研究所が調査した。この取り組みについては、興味深いエピソードがある。 折笠氏がはじめに3社を回って協力を打診すると、「店舗への効率的な配送について課題は抱えていたが、うちから他社に声をかけることはできなかった」と各社、ほぼ同じ反応だったという。共通課題を抱えていても企業の壁を越えて協業することの難しさを象徴している。